84 知られざる関係性
今回の執筆者は、企画者の呉王夫差です。
「す、すみません……。いきなりこんなこと言われても……戸惑ってしまいます……よね?」
「あ……ああ……」
やばいな……。早くこの場を取り繕わないと、ますます気まずくなるぞ……。
あ、話題が思いついたぞ。
「と、ところでアヤノさん」
「は、ははははい! な、なんでしょう?」
「アヤノさんって、この地方の出身じゃないっすよね?」
「よく、お気づきで」
「いえ。俺の知り合いに、アヤノさんと似た感じの名前の人がいたんで」
「氏景様の知り合い、ですか? それは氏景様のお連れ様のこと……ではないですよね?」
「そうっす」
さすがに、恭子の名前をここで出すわけにはいかない。
反乱軍に無断で情報を流すことになるし、何より男女の会話で他の女の子を話題に出すのは御法度だ。
しかし、それはすぐにバレることに。
「もしかして、佐藤恭子様のことで合っていらっしゃいますね?」
「これは驚いた。というかアヤノさん、恭子の事を知っているんですか?」
「はい。知っているどころか、私の親友です」
「え!」
恭子の知られざる一面が見えたな。まさか彼女が、聖光真世会の人と親友だったとは。
「実は私の母も恭子様のお母様と親交がありまして。同世代と言うこともあり、恭子様とはすぐに仲良くなりました」
「母親同士が知り合い……」
「はい。しかも母と恭子様のお母様は同郷の出身でいらっしゃいました。……2か月前にハイパーハリケーンで滅ぼされた大陸の近く、小さな島国で」
「あ……」
例の人工災害の現場か。つまり、日本と同じような文化を持った国はあったが、今は無いということ。
つくづく、統括理事会の思考がわからない。
資源問題の解決を図りたいのは理解できる。が、人間が長年築き上げた遺産も大切にしてもらいたいものだ。
「マキナ教団と統括理事会か全ての元凶です……」
うーむ、話題を転換させたのは良いが、むしろ今のほうが余計気まずい。
もっと別の話題を提供しないと。
「今、マキナ教団と統括理事会による暴力が際限なく広がっています。そこで私たち聖光真世会は、近々氏景様をはじめとする反乱軍に参加しようと考えているところなのです」
「その話、本当か?」
「はい。巫女長がつい先日お決めになったことです」
渡りに船、とはまさにこのことだ。
まさか設計士だけでなく、聖光真世会という組織から協力してもらえるとはな。
……しかし、どうも話が上手く行き過ぎている。
組織と組織の利害がぶつかるんだ。手を組んだ後も「相応の駆け引きは覚悟しろ」と暗に示していそうだ。
「そ……それに、この街から始まった大量虐殺の影響で人的資源も不足しています。だ、だから私たちとしては、その……ゆ、優秀な方と、子を沢山……つつつ、作っていく必要が……その、あ、あああるのです……」
だから、急に恥ずかしいこと言って赤くなるなって。こっちだって、その……こそばゆいというか、何というか。
「と、とりあえず! 私たちの総本山に向かいましょう」
「総本山?」
「この街――フセヴォロドグラートから北に15キロ進んだところにあります。案内しますので、後をついていってください」
「うっす。了解っす」
そうして、俺とアヤノは喫茶店を後にした。
「あの……沢山期待して……いいですから、ね?」
「い、いいから! 早く行こう!」
こうして、俺とアヤノは総本山を目指して復興が始まったばかりの街を出発した。
次回の執筆者は、鵠っちさんです。