82 次の仕事
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
帰り道、丸太を運ぶ道中では、みんな五十嵐先輩の話に聞き入っていて、ちょうどよく気が紛れて、結構楽に帰ってくることができた。
「みなさん、お帰りなさい。お疲れとは思いますが、次の仕事です」
笑顔のトリスタンに出迎えられて、やっと休めると思った矢先、もう次の仕事とはいかに。
一人一人に渡された紙には手伝いが必要な場所と作業内容の一覧が書かれていて、丸印がついているところは猫の手も借りたいほど忙しいらしく、そういうところに行ってほしいらしい。クロリスとイオカスタは二人で一枚のようだ。
「ちょっと、これはどういうことよ。あなた告げ口したわね」
「定期的にやりとりしていまして、一応報告しておきました」
俺達はわざわざ一人一枚渡されたのに、二人で一枚とは羨ましいと思ったら、どうやら違うらしい。
「どうしたんだ?」
「……勝手についてきたのをばらされたのよ」
「やっぱり俺のみりょ、ぐわっ!」
山野のセリフは五十嵐先輩の鉄骨で阻止された。
二人が渡された紙に書いてあったのは、要約すると、ヨルギオスさんからの『はやく帰ってきなさい』という趣旨の手紙。
最初に同行を知らされていなかったのでおかしいとは思ったが、よもや本当に無断だったとは。驚くよりも疑問に思う。そ
れが顔に出ていたようで、クロリスは開き直ったようなにこやかな表情で理由を述べた。
「ほら、世間知らずのお嬢様じゃあ、この世界でやっていけないから、ちょこっと旅に出ようと思ったのよ。で、ちょうどいいタイミングに四人で街から出て行くのが見えたからついてきたってわけ」
「きみたちは世間知らずの意味が違うだろう。……何もないところで生きてたってのは、たしかにそうだろうけど」
言い分はもっともである。が、それも部長に一刀両断される。たしかに、それは世間知らず違いだと思った。
「とりあえず、お二人の件に関してはこちらでやってもらいたいことがあると返事をしておきました。しばらくしたらお父様がやってくると思いますので、こちらで大人しくしていてくださいね」
二人は一瞬、悔しそうな、ホッとしたような、微妙な表情になっていたが、すぐに元通りの笑顔になった。
「まあ、俺達は仕事が待ってるからな……」
山野のなんとなくやる気の無い声がなかったら、もう少し固まったままだったかもしれない。
次回の執筆者は、まーりゃんさんです。