80 謎の病気
今回の執筆者は、まーりゃんさんです。
「で、救世主様方には悪いですが、フセヴォロドグラートの南東部にある森林で木材を調達してきて欲しいところですが、毎年恒例である謎の腹下し病が相次いでいます。その調査をお願いします」
トリスタンは詳細が書いてある書類を渡してきた。
読んでみると毎年この時期になると各地方でも謎の腹下し病が相次いでいる。
春から夏に移り変わる時期、原因不明の腹を下したり、お腹の異常を訴える要請が毎年のように起きていると。
原因の解明に、最初は食材の痛みや食い合わせなどの懸念された。が、食材に悪い所が見つからず、また食い合わせでではなかった。
そしてあまりにも重態の方は、体力が戻らず命を落としてしまう。
様々な検証の結果、まだ未明で薬剤が不足の為、全員に行き届かないとの事。
「謎の腹下しか~、僕も何度かあったね。確かにお腹痛いし、体力がごっそり落ちて中々治らないだよね。あれって」
「え? 五十嵐先輩。それっていつの話ですか?」
不意に五十嵐が体験していた事を知って驚いていた。
「いや、去年夏頃に確かに何人かはお腹を壊す人が部活内でいたし、僕も一回あったよ」
「そん時はどうしました?」
「薬飲んだら治ったよ」
どうしたもんかと首をかしげ、疑問している氏景。
(こっちと日本で起きる現象で同じ腹下し…)
「とりあえず現地に行って観ましょう」
氏景達は復興作業中で腹下しで倒れている人に聞いた。
「普段通りの日課でいつも通りの食事で急にお腹が痛くなり、食えば食うだけ痛くなるような……痛みです」
「毎年この時期は注意しても痛くなる人と痛くない人がいる。天運頼みでもこの通りだ」
「去年はなく、一昨年まで少なくても5、6回は体験しているぞ…でもつらい」
氏景達は話の内容に疑問を感じた。そこで昼食を知らせる鐘が鳴った。作業の人達もいつ自分がなるか不安のまま配膳を待っている。
「とりあえず、みんな飯を食おう。みんなで同じ物を食って症状が同じなら、何かあるばず…」
氏景の提案に皆は頷く。
配膳係りの人に同じ食事を持ってこさせ、みんなで食事した。実際食べて見ると何も起きない。味に至って普通の味。
「味は普通で何も不思議な事はないな」
「メッチャ普通の食事だね」
「料理している所を見たが変な事しているよう事はなかったぞ」
俺も山野も配給されている食事に疑問を持ってみたが、何も言えない状況。五十嵐先輩に関して料理方にも問題はなかった。
その後も原因不明のまま聞き込みしていた。そこにお腹を下しトイレに駆け付ける人達がいた。
原因を突き止める為一応聞き込みが出来る人に聞くと、「急に痛くなり、漏れそうなった」「多分下痢だが腹が猛烈に痛い」「も、漏れる。我慢出来ない」など相次いでいた。
トイレの前に行列か出来て、出てきた人は腹を押さえ横たわっている。
そんな中、ついに山野も顔色か悪くなった。
「うおぉぉぉ~、痛い! も、漏れる~。トイレ、トイレに行かせて!」
山野の絶叫で俺も五十嵐先輩も同くお腹が痛くなった。山野が言う通りトイレに行きたくなり、腹を下した。確かに痛いし、体力が無くなっていく。
トイレには行列。我慢の限界だと思いつつ、ようやく事を終えたが体力を奪われゲッソリしていた。
山野は寝込んだまま、五十嵐先輩もゲッソリとしたまま考えていた。
氏景は思い返すと食材には何も無い。料理方にも何も無い。器は樹の皿で洗っているならば何故と考えている。同じように食べた人達も腹下しになっている。
「本当に謎だな」
「ああ、だがこの時期を越えると何も起きないっても妙だな」
「何か原因があるはずだ」
俺も五十嵐先輩も何も起きなかった人に話を聞くと同じ食材での配給だったが、ただ違うのは皿だけだった。
俺達が食べたのは樹の皿、何も無かった人は陶器の皿。
そこに違いがあると思い、もう一度皿を見てみた。
陶器の皿は焼き物で洗えば綺麗に磨かれている。一方は樹の皿は洗われているが一部黒みがかかっている。
樹の皿は何なのか、調べてみると樫の木で作られているとかで新品は綺麗だった。それで食事をしている人は何も無かった。
使い続け黒みがかかっている物で食っている人だけが腹下しをしていた。
これにより器が原因ではないかと、改めて調べると黒みはカビだった。
長続きの雨に湿気により、カビが映えて樹の皿に繁殖し、黒くなっていたのだ。
樫の木を削って作られているため何の化工もされてない。ただ水洗いされただけの皿、故に誰も疑わなかったのだ。
陶器の皿は樹の皿と違って表面がツルツルとして洗えば汚れが落ちやすい。この差によって腹下しが起きていたのだ。
氏景達はトリスタンに報告すると納得がいった顔だった。
「確かに一部では未だに樹の皿を使ってますね。陶器の皿により格安の上、野晒しにしている所もあります。この時期はカビが映えやすいからだったとは思えませんでした。よく調べてくれました」
「原因の調査の為、身を犠牲にした甲斐があったぜ」と山野は親指を上げ、再びトイレに行った。
氏景は対策法としてこの時期は樹の皿は新品か、陶器の器に代えるように各地方に伝えるよう手筈を頼んだ。
「はい、わかりました。これで毎年の謎の腹下しが解明出来ました。二、三日はゆっくり休んでください」
「そうさせて貰います」
氏景達は薬を飲んで休んだ。
こうして謎の病気の事件は解決した。これにより、翌年から腹下しの患者は激減したと言う。
次回の執筆者は、企画者の呉王夫差です。