79 トリスタンとの再会
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
再びフセヴォロドグラートへとやってきた俺達は、まずトリスタンを探すことにした。
「ああ、それはご迷惑をおかけしました。使えるものはなんとか使いたいので、そういうものを選り分ける基準を作っていましてね」
「それはそうと、だいぶ作業が進んでいるみたいでよかったです」
トリスタンは中々見つからず、街中を散々探し回った。瓦礫の撤去作業はだいぶ進んでいるようで、以前は乱雑に積まれていた瓦礫が一部除けられて、道ができていたりする。よくみると、一部では大きさや材質などで種類分けがされているところもあるようだ。
「今回はこれをオズワルトさんから預かってきました」
「ふむ、この組織を調べるのですね。知っているものも初めて見る名前もありますが、こちらも人員を割きましょう。ところで、そちらの二人は見ない顔ですね」
先ほどからチラチラと不思議そうに見ていたトリスタンだったが、やはり気になっていたらしい。
「この二人は……」
「私はクロリス。この子は妹のイオカスタよ。よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
部長が紹介しようとするのを遮って自ら名乗り出るクロリス。今回はイオカスタも姉を諌めることなく、とりあえず挨拶だけ済ませることにしたらしい。
「二人はエグザルコプロスという子爵家のご令嬢だそうです。アミリアで巻き込まれた津波のときにプリヘーリヤが父親共々助けました」
「あんまりご令嬢って感じじゃないけどな」
「エグザルコプロス子爵というと、あの?」
「うるさいわね。あのがどのかは知らないけど、人ん家の事情に口をださないでくれない?」
クロリスの言い分はまったくである。にしても、部長はいつの間にそんなに長い名前を覚えたのだろうか。トリスタンも聞いたことがあるらしいから、そのなんとか子爵家って有名だったんだな。
「そうですか。どうやらこのリストには先代、もしくは先々代を目の仇にしていたと云われている組織もあるみたいですが、気にはなりませんか?」
「ふん、聞かせて」
クロリスの表情が変わった。いつになく真剣な表情を見せる姉に影響されたのか、イオカスタも顔を強張らせている。
「リストにはいくつかありますが、印がついているのはその内の二つ。リスト全体からすると少し見劣りするような勢力なので調査の優先順位は低い方ですが、あなたたちの協力次第では早期に調査できるように取り計らいましょう。話が終わったら、今日のところは作業の手伝いをお願いします」
「分かったわ。イオカスタ、一緒に頑張るわよ!」
「はい、お姉ちゃん」
案外簡単にクロリスとイオカスタのやる気を引き出してしまったトリスタンには脱帽である。やはりトリスタンも人を纏める側の人間であるらしい。
次回の執筆者は、まーりゃんさんです。