表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢を抱く少年 先達の軌跡 Glorious Feats (再投稿版)  作者: 磯別学園高校『空想世界研究部』なろう支部
78/194

78 諜報機関

 今回の執筆者は、企画者の呉王夫差です。

「確かその女性は、変装が巧いって話だよねえ? だったら、毎回集合の度に顔をつねる必要があるねえ」


 オズワルトの提案に、部長が対策法を口に出す。

 いやいや部長。某・白マントの怪盗じゃないんだから。

 

「しゅ、俊さん。それって痛いし、手間もかなりかかりますよ?」


「それにその女は、幻視の魔道具で変装しているんだぜ? つねっても、判別なんて出来ねえぜ」


「いやだねえ。冗談に決まってるじゃないか」


 相変わらず、突拍子もない発言をする変人だ。

 変わらない変人。自分で言ってて、奇妙に感じてきた……。



 そうして、あれこれ対策を練り始めたその時。

 後ろで何か小道具が破壊される音が聞こえてきた。


「何だ? 何か落ちたのか?」


 俺達全員、音のした方角を向く。

 するとそこには、プリヘーリヤの姿があった。

 

「まさかプリン。お前が……」


「このあたしに見え透いた冗談言っちゃダメだよ~。ていうか、あたしはプリちゃんだってば! もう……」


「まあまあ、落ち着いて」


 興奮状態のプリヘーリヤ。そしてそれを宥める部長。


「コホン……とにかく、今のは盗聴器を破壊した音だよ~」


「盗聴器、だと?」


 床に散らばっている黒い破片。

 どうやらそれが、盗聴器の残骸のようだ。


「見た感じ、魔力で動くタイプみたいだね~」


「魔力で動く……つまり、稼働時間こそ短いですが、好きな場所に隠せるタイプですね」


「なるほど。統括理事会やマキナ教団は、ここから情報を得ていたわけだね?」


「いや、そう考えるのは早計だぜ。この世界には諜報機関なんてゴマンとある。特定は難しいぜ」


 でもなルクレツィオ。わざわざ反乱軍に盗聴器を仕掛ける奴が、他に何処にいるって言うんだ?

 今の状況だと、どう考えても統括理事会とマキナ教団、それに与している組織意外にいなさそうな気がするんだけど……。

 

「だが、情報漏洩は軍事組織にとって致命的だ。少しでも良い。至急、盗聴器を仕掛けた組織を特定せよ」


「随分と難しいミッションを出したじゃねえか、リーダーさんよ」


「確かに困難な作戦ではありますが……わかりました。まずは、理事会や教団との繋がりが疑われる組織から当たってみます」


「よろしく頼む」


「へっ、骨が折れる仕事だぜ」


 オズワルトが、手早く周囲に指示を回す。

 しかし俺達には、まず外部の組織のデータが圧倒的に足りない。

 どう探せばよいのやら……。


「そして救世主達にも、諜報機関のリストを渡す。繋がりが疑われる機関に予め目印をつけてある。探してほしい」


 オズワルトが渡したリストには、大量の組織名が羅列されていた。

 それも、紙一面びっしりと。


「げ……。これを全部調べるのかよ?」


「全てではない。目印の組織だけだ」


「それでも、調べるのに時間も労力もかかるねえ……」


「別に僕達は他にやることもない。喜んでやらせていただくよ」


 五十嵐先輩、そこは空気を読んで! ……って言いたいところだけど、そんなに輝いている目を見たら文句は言えないな。


「さすが、体力だけ(・・)は底知れないですね、先輩」


「ん? 僕は別に体力だけじゃない。知識も俊からそれなりに取り入れているよ」


「へ、へえ……」


 部長から知識を取り入れている、と言う点がどうも信用し難いところだ。

 変に怪しい知識も教え込まれているんじゃないかと、邪推したくもなる。


「では、残りの細かい指示についても与えよう」


 そしてオズワルトは、今回の作戦遂行に必要な指示を紙に書いて部長に渡した。



 ◆◆◆◆◆



 森の中にある野営地を出発した俺達4人。一路、北の方角を目指して進む。


「でも、こうして『空想世界研究部(この4人)』だけで行動するのも懐かしいねえ」


「言われてみればそうですね。かれこれ、この世界に来てから、必ず反乱軍の誰かと行動していましたから」


「つまり、あのリーダーがこの4人だけで行動させていると言うことは、僕達も立派な戦力と見做しているわけだ」


 立派な戦力、ね。俺はどうも自分がその『立派な戦力』に該当するかどうか、いまだ半信半疑だ。

 でも最後に『空想世界研究部』だけで行動したのは、もう2か月も前のことか。時の流れというのは、速いものだ。


「はぁ……つまんねえ」


 そうして皆で昔の懐かしむ中、山野は一人大きく溜め息をついていた。


「なんだよ山野?」


「だってよ……女の子がいねえじゃんか、今回の作戦にはよ」


「またそれか。つか反省しろよ。俺はお前が余計な事暴露したお蔭で、大恥をかいたんだぞ」


「それを言うなら、俺はスパイ疑惑がかかったんだぜ? それを晴らすためには、どうしようもなかったっていうか……」


「犠牲になった俺の身も考えろよ、おい」


 悪びれる様子の無い山野。こいつも相変わらず反省の無い野郎なことだ。

 コイツだけは、今回の作戦にはマジいらないんじゃないか?

 頭も悪いし、女にはだらしないし、トラブルメーカーにしかならない。

 せめて女子が誰かいれば、山野(コイツ)を宥めることができるのにさ。 




「――見苦しい。醜い。言い訳なんて男のすることじゃないわよ」


「ん?」


 すると横から、どこか聞き慣れた声が耳に入ってきた。

 その声の主の正体は――


「そうは思わないの? アンタ」


 俺達の作戦には同行する予定の無かった、クロリスであった。

 その脇には、やはり妹のイオカスタの姿もある。


「お、クロリスちゃんにイオカスタちゃんじゃんか。まさか、俺の「頼れるお兄ちゃん」の魅惑に虜になってやってきたとか……」


「は? アンタ、頭おかしいんじゃないの? アンタにあるのは魅惑じゃなく、あくまで疑惑(・・)よ。そのふざけた性格のね」


「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!」


 クロリスも変わらず、言葉のマシンガンで容赦なく山野を打ちのめす。 

 そしてお馴染み、イオカスタが(クロリス)の罵詈雑言を鎮める光景。


「そうか……。つまり俺には疑惑を持たれるほど、罪深い大人の魅惑があるってわけだな……」


「はぁ!? どう解釈したら、そんなふうに聞こえたわけ!? やっぱ、アンタの脳味噌はとことん狂ってるわ」


「お、お姉ちゃん……」


 今回のクロリスの評価、俺は全面的に賛成だ。

 山野の都合のいい解釈は今に始まったことではないが……いつもいつも呆気にとられる。

 しかし「誰か女子がいれば……」とは思ったが、クロリスが相手なら余計に山野の謎発言が深まるばかりだ。


「まあ、ここらで少し静かになってみないかい?」


「ぐへっ!」


 五十嵐先輩がナルシスト状態の山野の首に、プロレスラー張りの強力なチョップを入れる。

 そして気絶して草の上に倒れた山野を、先輩は背中に背負って歩き始める。


「では行こうかい、皆」


「は、はい……」


 その光景に呆然とするクロリスとイオカスタ。

 

「さてと……リーダーさんの指示によると、フセヴォロドグラートに一旦戻ってトリスタンさんと合流してほしいそうだ。瓦礫の撤去作業、どこまで進んでいるのかねえ?」


 一方の部長は、オズワルトから渡された指示書を読み上げながら、平常通りの笑顔で俺達を先導した。

 次回の執筆者は、鵠っちさんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ