76 これまでとこれから
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
「そ、そうだ。あの二人はどこへ行ったんだ?」
どれほどの時間見つめあっていたのだろうか。一旦目を逸らしてしまうと、今度はなんだか妙に気恥ずかしく感じた。
「あの人たちもあれで中々忙しい人ですからね。今頃どこにいるのやら……」
恭子もどうやら同じらしく、少しうつむいている。
「生きていればまたそのうち会えますよ。あの人たちはそういう人ですから」
俺が立ち直ることができたのはアッキーとサライのおかげだ。一言でも礼を言いたかった。
恭子もそんな心情を察してくれたのだろうか。それは都合のいい思い違いだろうか。前者であると信じたい。
「まあなんにしろ、強くならなくちゃな」
「それもいいですが、その前に、あれから何があったのかお話してくれませんか?」
ここに戻ってきてからというもの、まともに口をきいていなかった。わざわざ俺のことを探しにきてくれたんだ。それくらい話さなくてはならないだろう。
「あ、待ってください。皆さんを呼んできますから」
口を開こうとした瞬間、恭子に制された。部長達やルクレツィオたちがやってきて、ひとしきり挨拶したあと、再び恭子に問われ、話し始めた。
仲間を殺して逃げてきたミクローシュに会ったこと。
食料を得るために一緒に行動するようになったこと。
ミクローシュが仲間を殺した理由を聞いたこと。
ミクローシュが語ったことを反乱軍に伝えようとして、シャツに血文字を綴ったこと。
エーリッキがやってきて俺の前でミクローシュが殺されたこと。
そして最後に、山野たちの声が聞こえてエーリッキが退いたこと。
……過去と決別しようと偽名を作ったのは恥ずかしいので言わなかった。
「人口調整だと……たちの悪い噂話ではなかったのか……」
さすがにオズワルトは何かを聞いたことがあったらしい。
次回の執筆者は、まーりゃんさんです。