67 食べるため
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
「……暗殺?」
暗殺したということは、ミクローシュは仲間を殺したということか。でも、なんのためだ?
空腹でまともに頭が働かないが、それがヤバイことだというのは分かる。もし本当のことならマキナ教団に追われているはず。そうなると、一緒にいれば俺も狙われる可能性が高い。
「正直、反乱軍のような寄せ集めの連中は信用できん。軍人に研究者に……やつらは銘々の組織を抜けた裏切り者達だ。その下に、街を破壊されて行くあてを失った者たちを訓練して規模を拡大したに過ぎない」
したに過ぎない、か。それであれだけの統制が取れているのだから、その訓練は生半可なものではなかったのだろう。
それにしても、あそこにいる人たちのほとんどが一般人だったとは、かなりの衝撃だ。
「そして、今や俺もその裏切り者の一員になったわけだが、やつらの下に入る気はない。そこでだ。アンタもあそこから出てきたんだろう? どうだ、組まないか?」
たしかに、一人でいるよりも二人の方がいいことがあるだろう。なにより、俺には知識が不足している。この世界のことも、デウス・エクス・マキナのことも。
今だって、空腹を押してやっと話をしている状態。食料の獲り方の知識もない。
「それ、断ったらどうなるんだ?」
「死体がひとつ増えるだけだろうな。まあ、俺がどうこうしなくても、アンタは勝手に飢え死にするだろうから、見なかったことにして置いていくだけだ。獣の糧にでもなっておけ」
食べられるものと食べられないものを見分ける知識があれば、また違ったのかもしれない。
が、この状況でないものねだりをしても仕方がない。いくら救世主と呼ばれようが、食べるものがなくなれば飢えるのだ。
しかし、このミクローシュを信用してもいいのだろうか。
もし追われているとして、いざとなったら盾として俺のことを差し出すつもりかもしれない。そうなれば、どちらにしろどうしようもなくなるだろう。
「……仲間になったとして、俺に何の利がある?」
「少なくても食えるようにはなる。今アンタは空腹で空腹で酷いんだろう? 目がヤバいんだよ」
……信用できるかどうかはさておき、とりあえずは乗ったほうがいいかもしれない。今は、生きることが最優先だ。
次回の執筆者は、まーりゃんさんです。