61 笑み
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
急いで駆け寄った俺の目に映っているのは、血溜まりに倒れる仲間達の姿。多少のうめき声が聞こえることから、まだ息のある者はいるらしい。
しかし、それが誰なのかを確認する時間は無い。背後には機械兵が迫る気配を感じる。
「こんなところで、死ぬわけにはいかないんだ……」
誰に聞かせるとも無い、自分を鼓舞するためだけの言葉。それさえも、これまでの飢えや渇きに疲労、それと極度の緊張でまともな音にならないことを知って、自嘲気味に笑みがこぼれる。
駆け寄った際に投げ捨てた二丁拳銃を拾い上げると、試射したときのことを思い出して、さらに笑みが深まるのを自覚する。
ここでやらなければどうせ後はないんだ。実戦で使うのは初めてだが、あの威力なら何割かは減らすことができるだろう。
相手の総力からすれば微々たるものかもしれないが、塵も積もれば山となる。各地に散らばっている仲間のために、ほんのちょっとでも貢献できればいい。
「ああ、もうやるしかないんだ……」
両手に持った銃に魔力を吸い取られる。フルリロードしている時間なんて無い。ここで終わるかもしれないのに威力の調節をする必要も無い。
ならば、一体でも多く減らせるように、できるだけ多くの魔力をこめてしまおう。そんなことをしたら、またオドレイに叱られるかな?
そんなことを考えているうちに、手に持った銃が震え出した。魔力の許容用の限界でもあるのだろうか、それとも、緊張のしすぎで手が震えているのだろうか。
どちらでも構わない。これだけ数がいるんだ。そんなに狙いすまさなくても当たりはするだろう。
「さあ、鉄屑にしてやるよ!」
引き金を引くと、バァァン! というもの凄い音がして、五、六体の機械兵が倒れた。
さらに数回の発砲で三十体ほどの機械兵を倒すことができたが、どうやらこれまでのようだ。火事場の馬鹿力とはよく言ったものだが、当然、限界というものは存在する。
俺の場合はどうやら銃に無理をさせすぎたらしい。固いはずの素材に目に見える亀裂がいくつも走っている。
体力も魔力も限界に近い。もはや立っていることができなくなって膝が折れた。
「ウアアァァァァァァーー!」
途切れそうになる意識を保つように、最後の力を振り絞るように叫んだ。叫んで、限界に近い魔力を掻き集めることに集中する。
それに何の意味があるのか、自分でも分からないが、とにかくそうしなければいられなかった。
次回の執筆者は、スーパーキンモクセイさんです。