58 俺に、何ができる?
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
「おいなんだよそのマヌケヅラは? それともなんだ、俺を油断させる作戦か?」
「氏景さん、しっかりしてください! ……みなさん、十五人ほどここに残って、あとは五人一組で村の人たちが無事か確認してきてください!」
衝撃的な出来事に茫然と立ち竦んでしまった俺は、恭子の指示でみんなが動き出す気配を感じて我に返る。目の前にはまだ男がいることから、まだあまり時間は経っていないらしい。
「見た感じ素人だな。そんなやつにまで指揮権を与えるなんて、よっぽど人手不足なんじゃないか?」
確かに人手不足かもしれないが、俺が任されている理由はそんなことではない。たしかに、恭子たちの方が的確な指揮をとれるだろう。だが、いつまでも頼りきりではいけないのだ。
「図星か。なにか言い返したらどうなんだ。まあこっちも急いでるんだ。じゃあな」
そう言うが速いか、敵はさっさといなくなってしまった。俺がぐずぐずしていたばかりに、相手を取り逃してしまった。
「はぁ、アンタ本当に救世主なの? 使えないわね」
「お姉ちゃん、そんな言い方は失礼だよ!」
イオカスタはそう言ってくれるものの、大部分の人たちはクロリスと同じことを思うだろう。恭子の方を見ると、少し考え事をしているように見える。このまま俺が指揮官を続けてもいいか迷っているのだろうか。
そんな中、村の確認に行った者たちが戻ってきた。どうやら備蓄の管理をしていた家が狙われていたようで、食料などはほとんど残っていないが、皆殺しにされたわけではないそうだ。抵抗せずに逃げた人は助かったらしい。
「すみません。俺達のせいでこんなことに……」
「いや、君達のせいではないよ。プリちゃんには世話になったし、こんなこと、誰が予想できるんだ。畑が酷く荒らされたわけじゃないから、あまり心配しないでくれ」
この村の人たちはなんて強いんだろうか。あんなことがあったというのに、目に涙を浮かべながらも、もう前を向いている。こんな人たちならば、乗り切ることができるだろうと、そう思わせる力を感じた。
「遺体をこのまま放置しておくわけにはいかん。かといって、葬式をするほどの余力もないだろう。今は埋葬するだけにしておこう」
ヨルギオスの提案で遺体を埋葬したのは、もうとっくに日が暮れてからのことだった。
次回の執筆者は、スーパーキンモクセイさんです。