52 消滅した港町
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
探し始めて数時間。やはりそれらしき人物は見つからない。
そもそもプリヘーリヤの記憶も曖昧だし、もう何年も前の話だ。プリヘーリヤも言っていたが、生きていたとしても、別の街に移っている可能性もある。
「なあ、そいつが本当にシュトラウス家の末裔だったとして、本当に引き渡していいものなのか? 相手はこの惨状を引き起こしたやつらなんだろ?」
「まあ、オズワルトたちには考えがあるんだろう。俺達が考えても仕方ない」
見つかるかどうかも分からないけど、と心の中で付け足して、山野に適当な相槌を打ちながら歩き回る。
最初に見たときは、ここが街だったとは到底信じられなかったが、歩き回っているうちに、建物の残骸と思しき破片をちほらと見ることができた。
「ここが街だったなんてな」
「ここも街だったんだよ。いいところだったんだけどね……」
落ちている欠片を拾い上げてふと呟いた一言に、いつからそこにいたのか、プリヘーリヤが呟く。
「海沿いの街だから魚介が有名でね。遠方からも人が来たりして、結構賑わってたんだよ。……昔の話だけど」
フセヴォロドグラート近い位置にあるということは、よく遊びにきたりでもしたのだろうか。時折ピタリと立ち止まり、遠い目をしている。
辺りを見ると、他の隊員の中にもそんな人が何人かいるようだ。中には膝をついて、祈るように手を組んでいる者までいる。
「今日はもう暗くなるので、このくらいにして夜に備えましょう」
恭子が今日の捜索の終了を宣言したのは、だいぶ日が傾いてきた頃。なにもないところに、次々と簡易の屋根が出来始め、いつの間に調達していたのか、新鮮な魚が捌かれ始める。
「なぜか沖合いの魚も結構獲れたらしい。潮流が変わって集団で流されてきたか、何か悪い予兆か……」
部長達のところへ戻ると、ルクレツィオと部長が獲れた魚について話していた。
どうやらこの魚は、普段は船で沖へ出ないと獲れないものらしい。しかし、今回は近いところで獲っていたので不思議だという。
素人考えでは、とりあえず美味い飯にありつければ満足だが、そういうことでもないようだ。
次回の執筆者は、まーりゃんさんです。