5 魔法の実在性
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
「ちょっと待って」
「はい、何でしょうか?」
俺は彼女の言葉を遮った。
分からない。さっきは分かったと頷きはしたが、やはり分からないものは分からない。
今度は「魔法を使ってほしい」だって?
「お前の言いたいことはなんとなく分かったぜ。とりあえず、お茶だな!!」
「魔法なんて本当にあるのか、ですね?」
とりわけ部長に倣ってか山野のことは無視することにしたらしい。なんとも順応性の高いことで。
それはそうと、“魔法”というものの存在である。
何せこの世界で魔法とは、それこそ『空想』の世界のこと。それを、さも当然のごとく「使って」と言われてちゃんと使えるかということだ。
「この世界では“魔法”を知っている人はごくごく僅かとお聞きしています。先ほど言ったとおり、この世界の魔力は他の世界に比べて薄いので、派手なことは出来ません。使い方については向こうで説明しますから、まずは私の世界の魔法を一度ご覧に入れましょう」
そう言うが速いか、どこからともなく『何か』を取り出す、空中に米粒ほどの小さな氷を出現させた。しかも、それらはいつまでたっても一向に落下する様子はない。
これが、ホンモノの“魔法”か……………。
それと今取り出したものは一体何だったのだろう。あまりにも高速すぎてよく見えなかった。
「恭子さん。今何気なく魔法を使ったようだけど、『門』とやらを使う分の魔力は大丈夫なのかな?」
「はい。これくらいであれば、明日になる前には元に戻ると思います」
五十嵐先輩が確認すると、彼女は魔力を使う量は加減したらしい。
彼女の世界を救うという決定は部長自らが下した。荒唐無稽な話のようだが、どうやら異世界とやらは本当にありそうだ。
部長も五十嵐先輩も山野も、表面上は取り繕っているようにみえるが、妙にそわそわしている。かく言う俺もあまり人のことは言えないが。
「少なくとも、明日の朝までは執行猶予期間ってところか。その間にお別れでも済ませておかないとな」
何気ない俺の一言に神妙で顔つきで頷く一同であった。
次回の執筆者は、企画者の呉王夫差です。