44 明るさの裏では
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
「あれ、どうしたの? 言ってなかったっけ?」
少なくとも俺は聞いた覚えがない。そもそも娘がいるようには見えない。
「生きているのか死んでいるのか……消息不明なんだ。まあ、あんまり心配はしてないよ。そんなに弱い子じゃあないからね」
そうは言いつつも、その表情はやはり悲しげに見える。いつも明るく振舞っている裏では、そんな過去があったのかと、なんだかプリヘーリヤが大きく思えた。
「ああ、あいつか。あいつなら大丈夫だろうよ。齢三つにして屈強な男の頸骨にヒビを入れた拳を持つとかいうあいつなら」
「たしかに、昔からすぐに殴る子ではあったけど、その話は嘘だからね?! 実際にダメージがあったのは筋肉だから!!」
「……さすがに骨を折ったいうのは嘘だったのか」
「うひゃぁ!」
ようやく姿を見せたオズワルトに驚くプリヘーリヤ。オズワルトですら半信半疑だったということは、それなりに現実味のありそうな噂だったのだろうか……。
ただ思うことは、三歳児が筋肉にダメージを与えるほどの拳を持っていることが、そもそも凄いのではないかということである。
オズワルトや部長と合流して、とりあえずはオドレイが俺たち三人の武器の仕上がり具合を報告していく。オズワルトは俺の方を見て神妙な顔をしたあと、部長に何かを耳打ちした。
一体、なにを言ったのだろうか。あとで何か言われるだろうことを覚悟しておくことにする。
「オドレイ。活躍は耳にしている。しばらくここに留まり全員の武器の調整を。そのあとは、とりあえず近い街から順に、各地を巡って武器の調整をしていくように」
勝手に持ち場を離れて各地を点々としていたことにより、特定の地に置いておくよりも、そのまま各地を回らせることにしたようだ。
話は続き、オドレイには瓦礫の撤去するための道具も作らせることになり、簡易の報告会は一旦終了した。また夜に集まるらしい。
「氏景、ちょっとこい。それから、ルクレツィオかプリヘーリヤ……さん。意見が聞きたいから少し付き合ってくれないか?」
「すまねえ。俺はちょっくら呼ばれてるからよ」
「しょうがないなあ。私が行ってあげるよ。それと、いまさら敬称をつけるとか、ちょっと凹んじゃうんだからね」
一体どんな話をするのだろうか。なんだか緊張してきた。
次回の執筆者は、まーりゃんさんです。