41 冴えてる……?
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
恭子とプリヘーリヤにオドレイのことを聞いたはいいものの、山野にそれを告げるタイミングがなかなか訪れなかった。
「もうちょっと調整しよう」など、なにかと理由をつけてオドレイが山野に付きまとっているからである。
さすがに、本人がいる前でそんな話をするような度胸はない。
「よう救世主。恭子にオドレイのこと聞いたんだってな」
「ああ。あんな風に四六時中一緒にいるもんだから、なかなか教えるタイミングがなくって……」
「込み入った問題を抜きにすれば、なかなか羨ましい状況だけどな」
一瞬、頭の中に疑問がよぎったが、オドレイは腕の立つ加工技師だということを思い出す。
初心者の武器をそこまで念入りに調整して意味があるのかとルクレツィオに聞いてみたところ、初心者にそんな細かい制御ができるはずないだろうが、全く調整しないよりはマシだと言われた。
「そんなことよりよ、人の恋路よりも自分の武器はいいのか?」
「ですよね~。元の世界では銃なんて扱ったことなんてないし……」
「だったらなんで銃にしたんだよ」
「まあそんなこと言ったら、剣だって魔法だって元の世界には不要だったし、何を選んでも変わらないと思う……たぶん……」
「まあ、時間が取れれば誰かにコツでも聞いてみるんだな」
たしかトリスタンが銃を使っていたよなと思い出し、休憩時間に少し聞いてみようかと計画を立て始めたところで、山野が目で何かを訴えていることに気が付く。
「ちょっと用を足しに向こうの木の陰まで。周囲の警戒に山野連れていくから」
多少強引だが、なんとか連れ出すことには成功した。
あまり長いのも気まずいので、とりあえず、オドレイが女性であることを伝える。
「でも、なんか変な感じがするんだよ」
「サキュバスとドワーフのハーフだそうだ」
「……それが理由か。我ながら何とも冴えてるな……」
それを冴えているというかは考えどころだが、なんとも晴れ渡った表情の山野を見て、妙なことを聞いてみた甲斐があったらしいと思った。
次回の執筆者は、まーりゃんさんです。