35 痛み
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
全身の痛みで目が覚めると、恭子と部長が話しこんでいる姿が目に入った。
どうやら、いつの間にか村まで運ばれたらしい。
「ようやくお目覚めかい? またこっぴどくやられたみたいだね」
「森のほうから光が見えましたので何事かと思って見に行ってみれば、ルクレツィオさんも村の人たちも、みんな気を失ってたんですから。びっくりしたじゃないですか」
「……ご心配おかけして申し訳ありません」
とりあえず、事情は先に目覚めたルクレツィオに聞いて大体は把握しているらしい。
「まあ、あなたの発光現象のおかげで早くに救助に行けたのですし、そう自分を責めるものでもありませんよ。君達全員を運ぶのに、少し時間はかかりましたがね」
そう言うのは、部長達と反対側に待機していたらしいトリスタン。
痛みで首を動かすことすら億劫なので、そこにいることすら気付いておらず、少し驚いた反動で、またあちこちに痛みが走った。
「いるならもっと早い段階で喋ってくれというような顔だね。村人達と、ルクレツィオと、君と。この数日間で一番慌ただしくしていたんだ。ちょっとくらい船をこいでいたとしても大目に見てあげてくれ」
「数日? あれから何日経ったんですか?」
「あれからというのがどの時点を指しているつもりか分からないけど、君たちが出て行ってからは三日目が終わろうという時間だよ。君が光るとしばらく動かないのは、もういつものこととして定着してしまっているけど、これからもっと激しい戦闘に赴くようになったら、このままでは使い物にならないと話していたのが、君が目覚める直前のことだ」
そんなことが話し合われていたのか。
でも確かにそうだ。詳しいことはよく思い出せないが、身体の底からなにやら力が湧いてきて、気を失うということは覚えている。
どうやら自分の身体が光っているらしいが、そのあたりの記憶やあやふやである。
そして、そのあやふやな時間に、身に覚えは無いが、魔法を使っているらしい。
こんな何をしでかすか分からない、しかもそれなりに強力らしい潜在能力は、いざというときに仲間を危険に晒してしまうかもしれない。
そこまで考えが及ぶと、どうやら顔にでていたらしく、いつの間に近くに来ていた山野が五十嵐先輩の方をちらと盗み見て言った。
「分からないことをいつまでも考えても仕方ないだろ。とりあえず、鍛えるところから始めようぜ」
そうだ。魔法というものに出会ってからまだ日が浅い。
最初から上手くいくはずなんて無いんだと、再確認した。
次回の執筆者は、まーりゃんさんです。