27 書置き
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
俺たちに手を振っていたプリヘーリヤは、その手に紙のようなものが握られている。
話を聞くと、どうやら書置きらしい。
「なあ、なんて書いてあるんだ?」
さすがにもう『黙れ山野』では済まないようだ。
あの部長でさえ、頭をひねっている。
「ああ、この文字ですか。これは暗号でして、まあ簡単に言ってしまうと『まともに戦える人材が少なくなったから、安全な場所に避難する』と書いてあります」
「この村は安全じゃないのか?」
「魔物の大群が押し寄せてくるとなると、全員を守りきることは不可能でしょう」
説明するトリスタンの表情は変わらないように見えるが、よく見ると、グッと拳を握りしめて何やら耐えているらしいことが見て取れる。
恐怖か、村を放棄したことに対する怒りか。
あるいは両方か、それとももっと違う理由か。
俺には想像することしかできない。
「戦える人材が少なくなったと言いましたよね?」
「ええ。そのようです」
「ということは、もしかして既に……」
「はい、何度か小規模な交戦があったみたいですね」
さすが部長だ。
言葉尻を取るような言い方だったとしても、重要な部分に気が付くその頭の回転の速さは見習うべきところだろう。
「で、その安全な場所とやらはどこにあるんですか?」
「森に入ってすぐに獣道があるんだが、途中で外れて半日くらい行くと、ちょっとした地下壕があるんだ。たぶんそん中だな」
「我々が来る日程は前もって伝えていたはずなんですがね……。避難するほどとなると、合流したとしても守りきれるかどうか……」
部長の問いかけに答えたルクレツィオに、すでに諦めかけているトリスタン。
絶望的な状況を前に、淡々と事実の確認をするルクレツィオだが、トリスタンと同じく、顔色は良くない。
「まだまだ使えねえかもしれないけど、俺たちは救世主なんだろ? ちょっとは信じてみろって。な?」
「……そうですね。今回は救世主がいるんです。負けるはずがないですね」
「よし、氏景はなにもするなよ。俺が活躍して可愛い子にモテまくるんだからな!」
「……ふっ、お前だけいいカッコさせるかよ」
トリスタンも少し元気がでたようでなによりだ。
でもだ山野よ。最後のが無ければ珍しく格好良かったんだがな。
次回の執筆者は、企画者の呉王夫差です。