25 初任務
今回の執筆者は、企画者の呉王夫差です。
翌日。
宿舎の前で、俺たち含む反乱軍が全員一斉に整列をしていた。
そして、俺たちの前に堂々と胸を張って現われてきたのは、軍のリーダーのオズワルト。
彼は正面に立つと、早速大きな声で挨拶をした。
「さあ、今日からはいよいよ! 『救世主』も参戦しての作戦が開始される!」
今まで機械兵や魔物と対等に渡り合えるだけの戦闘技術を持たず、反乱軍に保護され続けていた俺たち。
だが、今日からは反乱軍の正式な一員として、任務にあたることになる。
ここからが本当に本当の本番だな。
「諸君! 彼らの補佐も行いつつ、自らの任務に注力せよ! 全体への連絡は以上!」
オズワルトの高らかな挨拶が終わると、各自の細かい連絡はトリスタンが執り行った。
「――では、そこの4人。こちらに来てください」
「はい」
「今日あなた方が行う作戦は、かなり初歩的な作戦です」
初歩的ねえ。確かに戦慣れしているわけじゃないから、簡単なところから慣れさせていく心づもりなんだろうな。
「差し詰め、村の防衛ってところだぜ」
「防衛?」
ルクレツィオがトリスタンを押しのけて、代わりに詳しい説明に入った。
「ああ。実はこのあたりで、俺たち反乱軍に保護されながら農業やっている村があるんだ。ただ……」
「ただ?」
「最近、他の作戦に人員を割いているから人手が足りねえ状況なんだ。しかも、魔物の大群が近くその村にやってくるらしいんだぜ」
それは一大事だな。早いところ向かって、救援しないと。
でもルクレツィオ。トリスタンがのけ者にされて不満そうな顔してるぞ。
それに初歩的と言いながら、かなりレベルの高そうな内容だ。
だが構わず、ルクレツィオは続ける。
「俺たちにとっちゃ貴重な食糧基地だ。村を失うわけにはいかねえ。敵も強い部類の奴はいないとは思うが、油断するんじゃねえぞ」
「ああ。わかった」
「あと、補佐として俺のほかに、恭子とプリヘーリヤも来ることになってる。じゃあ、準備が出来たら俺を呼べよ」
「オッケー」
いつも通りのメンバーだな。まあ、下手に気を張る相手じゃないのはちょうど良い。
昨日の授業の成果、魔物に見せつけてやるとしますかね。
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「ハァ、ハァ……。キツイなあ……」
俺たちは深い渓谷を歩いていた。
谷沿いには、人がやっとすれ違える分の狭い歩道と、真下の急流に落ちないように張られた黄色いロープがあるのみ。
その道も標高のアップダウンが激しく、村が余計遠くに感じられる。
「これも仕方ないんです。機械兵や魔物が容易に侵入してこれないように、あえて険しい造りになっているのです」
「あれ? でも村には魔物の大群がせまってるんじゃ……」
「確かに村は三方を崖に囲まれた盆地にあります。でも、もう一方のほうは緩やかな坂が続く広い森。今回はそちらから魔物がやってくるのです」
「じゃあ、そっちのほうに兵力を集中的に投入させればいいんじゃ……」
「それでも足りないから、あたしたちが向かってるじゃん」
相当、その村は防衛力不足なんだな。守りやすい地形を有していても、兵力が足りないなんて……。
「腕が鳴るねえ。氏景」
「部長。そんなに喜べることじゃないですよ」
「この体も、とうとう人の役に立てる日が来たんだな……」
「五十嵐先輩。感動しないでください」
「村の女の子助けて、俺も彼女げっ……」
「黙れ。山野」
深刻な状況だってのに、わかってるのかなこの3人は。
不安だ。やっぱり不安だ、この変人集団は。
本当に作戦成功となるのか?
そうして2時間ほど進むと、深い谷ばかりの地形から視界が徐々に開けてきた。
そうか、あれが目的の村か。
ようし、俺たちの初任務、成功させてやる!
俺たちはそのまま、村の中心部へ歩を進めたのであった。
次回の執筆者は、アンドロマリウスさんです。