176 朗報
今回の執筆者も企画者の呉王夫差です。
「エーリッキが殺された!?」
ヴァレイダム防衛中のある日、俺達にある知らせが届いた。
アヤノを殺し、俺達に脅迫のビデオを送りつけたエーリッキが死亡したのだ。さらに詳しい情報では、彼が殺されたのはなんと日本の首相官邸。殺害の実行犯に関しては不明らしい。
「驕れるものは久しからず。ようやく罰が当たったようだねえ」
「これで、アヤノさんに良い報告ができそうです・・・・・・」
「でも、あと一歩遅ければ総理大臣をはじめ閣僚の多くが死に、日本は間違いなく混乱していたと考えると、恐ろしい話だね・・・・・・」
1人の日本人として、彼が死んだことで総理大臣の暗殺を未然に防げたのは喜ばしいことである。さらにこの世界の救世主として、アヤノやミクローシュの仇を代わりに討ってくれた人には感謝するばかりである。
ただ、本当に際どいタイミングであったのは確かなようだ。それにエーリッキを殺した人が不明というのも気になる。
首相官邸というくらいだ、警備は厳重だ。護衛のSPや警備員が殺したのなら、そう伝えられるはずだろう。真っ当に職務を果たしたことになるのだから。
そうでないとすれば、簡単には侵入できない官邸の敷地内で一体誰がエーリッキを始末したのか? 大変気になるところだ。
「ていうか、どこからの情報なんだそれ?」
「上層部からのようです」
「上層部、ねえ。まさか日本に反乱軍の諜報員とか常駐させてたとか?」
「ええ、彼の企みを防ぐためにもそうさせてもらいました。さすがに一国のトップの暗殺未遂ですから、日本をはじめ各国ですさまじい量の報道が連日なされているようですが」
「さすが恭子ちゃん! 冴えてるな!」
「黙れ山野」
「しかし、暗殺未遂自体がニュースになるのはわかるけど、その犯人がエーリッキだなんてよくわかったね。俺達の世界にはそもそも存在すらしていない人間のはずなのに」
「そうだねえ。総理大臣の命を狙う人間は大勢いる。もしかしたらエーリッキとは限らないかもしれないのに」
「・・・・・・ええ、そこが私も引っ掛かるところなんですよね。ニュースでも犯人の名前は不明と報道されていますし、所持品も拳銃と正体不明の機械としか・・・・・・」
ニュースで取り上げられていないのに判明したエーリッキの死。上層部ーーアッキーやサライの情報源も気になるところだ。
「それともう一つお知らせがありまして。ペトラスポリス城の地下室にあったエグザルコプロス家の書物の中身が開示されました。具体的には中興の祖、ソティリオスと機械仕掛けの神の関わりについてです」
ペトラスポリス城の地下室か。以前にクロリスとイオカスタを説得しようと思って逆に威嚇射撃されたあの場所か。
あれ以来、俺はあの2人と非常に会いづらい雰囲気になってしまったが、彼女達は今どうしているんだろうか・・・・・・?
「ようやく機械神黎明期の資料が読める! 首を長くして待っていたよ。それにしても資料を入手してから開示までに随分時間がかかったんだねえ」
「ええ。今まではエグザルコプロス家の支持者が開示を拒み続けていましたが、つい先日クロリスさんとイオカスタさんの意向を受けて公開に漕ぎつけたようです」
2人に心境の変化でもあったのだろうか。俺達にはその理由を窺い知ることはできないが、せめて資料の内容だけでも教えてもらうことにしよう。
次回の執筆者も企画者の呉王夫差です。