164 意外な再会
今回の執筆者は企画者の呉王夫差です。
寺院に滞在すること1か月、終わりなき子作り生活の休息を取るため、俺達は寺院の中を散策していた。
「ふう……モテる男は辛いというが、さすがの俺もガチで体が辛くなってきたぜ……」
「アヤノから『下半身が元気になるお薬』を注射されたりもしたけど、体力は薬品だけで保てるものじゃないね……」
男子高校生と言えば性欲の塊のような人種。全員が全員ではないが、少なくとも『空想世界研究部』の皆はそれに該当していた。
彼女が欲しいという願望があった俺や山野は勿論、その手の話題には淡泊と思われた部長や五十嵐先輩もアヤノの提案に従い、数々の巫女と交わりを遂げていた。
そもそも俺達の母校、磯別学園は全校生徒の7割が女子高生。そんな高校に入学した以上、ハーレム願望は全員あったのだろう。俺も人の事は言えないが。
だが、実際に官能的ハーレムを体験してみると、これがかなり体力を要するシロモノ。
10代半ばの旺盛な性欲と体力があれば存分に楽しめると思っていたが、2週間経過する頃には性欲よりも疲労のほうが勝るようになっていた。
それでも体力に勝る山野や五十嵐先輩は寝床で巫女と励んでいたが、1か月を経てさすがに疲れたのか、1日休憩を貰うことにした。
「それでも俺達はまだハーレムの維持費や女性の身分を考えなくて済む分、まだ楽なんだよねえ。オスマン帝国の皇帝のハーレムはこの2つも考えなきゃいけなかったんだからねえ……」
「ハーレムって実際は結構大変なんだな……」
ちなみにこちらの世界にも妊娠検査薬はあるらしく、俺達が交わった巫女の半分以上で陽性反応が出たという。その中には当然、アヤノも含まれていた。
つまりあと数か月経てば、俺達4人は誰かしらの父親になるということ。まさか高校生(中退しているが)の身で子持ちになるとは思ってもみなかった。
そのようにこの1か月を振り返っていると、アヤノが俺達の前に現れた。
「お身体の調子はいかがですか?」
「あ、まあ……ぼちぼちといったところ、かな……」
「皆様には子作りという大事な仕事があるのですから、体調管理はしっかりお願いしますね。……私はお腹に氏景様の子を宿せて嬉しい限りですが」
「ぶはっ!」
ううむ、いざ「自分の子を妊娠した」と面と向かって言われるとやっぱ恥ずかしいな……。それに恭子に対する罪悪感も感じる……。俺達の世界じゃ、複数の女の子に手を出すのは男として最低の行為だったからな。
「でも気を付けてくださいね? いくら休暇が取れたとはいえ、抜け駆けして貴方がたの子種を狙う巫女がいないとも限りませんから」
「う、うん。気をつけるよ」
「私達としては、それに応じてくれた方が有り難いのですが」
「さすがにそれは体力の限界というか……」
「では、私が貴方がたの護衛につきますね」
こうして、アヤノが俺達の護衛に回った。しかし抜け駆けで子種を狙うって、どんだけ強欲な巫女なんだ? 修行が足りない現われな気がするが。
そんな感じで廊下を歩いていると、向こうから人影が2人こちらに向かっているのが見えた。
「まさか、不届き物の巫女!?」
「いや、あの人影は……男だな」
女性にしてはやたら身長が高く、大股な歩き方。聖光真聖会の巫女でそのようなガサツな歩き方をしている人はいない。
そして人影の顔が見えたところで、俺は目を疑った。
「……アッキーさん? それにサライさんまで……」
見たことのある2人の中年男性。かつてアミリア近郊の反乱軍野営地で初めて会った、"かつての救世主"だ。
「あ? 誰かと思えば、救世主のガキじゃねえか」
「久しぶりだね氏景君。活躍は聞いてるよ」
髭を生やし、ぶっきらぼうで気難しい雰囲気を漂わせ、右足に義足をつけている男がアッキー・サンガ。
髭は無く、やせ形の優しそうな雰囲気の男性がサライ・アルコスタ。
俺が反乱軍に戻ったあと、2人は俺を叱咤激励してくれた。あれ以来全く姿を見かけなかったが、聖光真聖会の寺院で会うことになるとは。
「なんで2人はここに?」
「食料の配給だ」
「配給?」
「アッキーがパン屋をやっているって話は前にしたよね。反乱軍が大陸東方を押さえてから、街に移住者が増えてパン屋の儲けが増えて従業員も増えるようになって。そんな時に聖光真聖会から『温かいパンが欲しい』と依頼が来てね」
「けっ。まあ、フセヴォロドグラートとアミリアの店は部下に任せてっから、寺に来るのは構わねえんだけどよ。そしたら、俺達のもとに半裸の巫女がいきなり集まってきやがったんだ」
半裸の巫女が2人のところに? まさか――
「そしたら、ここの巫女長さんに『私達と子作りしてくださいませ』とお願いされちゃってさ。それ以来、僕達はパンじゃなくて赤ちゃんを作る羽目になったんだ」
「え、2人もですか?」
「あ? テメェらもか? そういやぁ、救世主の子種が欲しいなどとほざく声が聞こえてたが、まさか本当にベッドでギシアンしてやがったとはな。ガキのくせに生意気だ」
「な……生意気は余計でしょう。そ、それにギシアンって……」
「事実だろーが」
「しかし、それだと食料の配給は全然できてないってことだねえ?」
「まあ、そっちは女の子の部下に任せているよ。……さすがに子作りの件は話せてないけどね」
「……出来れば、そのまま黙っててたほうがトクだと思いますよ?」
「うるせえ! 俺は理事会のクソな虐殺劇に対抗してんだ。恥じることはねえ!」
なんだこの会話……まるで成人向けアニメの設定説明に出てきそうな内容だな……。山野の家で見せられたせいで少し覚えちゃったけど。
しかし、アッキーもサライも全く変わってないな。これが自分の道に生きる大人の姿というものなのか。俺達と同じく沢山の女の子を抱いているのに、余裕さえ感じるぞ……。会話の内容は褒められたものじゃないが。
「ところで、反乱軍が大変なことになってるって噂だけど、どうしたのかい?」
サライが話題を変えて、反乱軍の話になると俺達はすぐさま暗いムードになった。
だが、この世界で生き残っていく以上、隠し通す意味はない。俺達はペトラスポリス攻略戦と例の大津波の件を2人に伝えた。
次回の執筆者も企画者の呉王夫差です。