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夢を抱く少年 先達の軌跡 Glorious Feats (再投稿版)  作者: 磯別学園高校『空想世界研究部』なろう支部
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150 冷血なゲリラ

 今回の執筆者も企画者の呉王夫差です。

 翌日、俺達は反乱軍とゲリラが衝突する市街地に来ていた。

 犠牲者を増やさないために、市民から得た情報をもとにゲリラ構成員の説得に当たる。


 だが、前線は銃弾や魔力砲が飛び交う危険地帯。俺が反乱軍の人間と分かれば、当然相手は俺を狙い撃ちしてくるだろう。

 そのまま"もう1人の自分"を発動させて戦うのは簡単だ。でもそれだと、結局は多くの死者が出かねない。そこでオズワルトや五十嵐先輩の助言を受けて、俺はゲリラ構成員と同じ軍服でゲリラ内部に潜入する。

 仲間だと分かれば、相手も撃ってはこない。その心理を利用して司令官に近づき、スキをついて捕縛。司令官を人質に投降を呼びかけ、ゲリラが降伏すればそれでよし。降伏しなければ、撤退中に"もう1人の自分"を使って相手の攻撃を凌ぎつつ、司令官をオズワルトに引き渡す算段となっている。


 人質を取るのは卑怯なようだが、1人でも多くの人を助けるためには止むを得ない。俺は作戦を実行した。


「さあ、司令官は捕縛したぞ! 周りには反乱軍も迫っている。抵抗をやめて投降しろ!」


 実際、作戦は途中まで難なく進み、司令官の捕縛にも成功した。ところが、ここで誤算が生じた。


「皆! 司令官ごとこの男に魔力砲を浴びせろ! 木っ端微塵にするんだ!」


「ラジャー!」


 俺が攻撃されるのは想定済みだ。しかし、ゲリラの構成員が即座に躊躇なく司令官も殺しにかかるとは思わなかった。

 死人を出してたまるか! すかさず俺は司令官の前に立ち、攻撃をわざと浴びて"もう1人の自分"を発動した。


『世を救いたる者の功徳も解せぬ愚か者に、啓蒙の鉄槌を与えん。……ケーフィヒ・シュトラーフェ』


 呪文とともに、周りの構成員が頭を抱えて一斉に苦しみ始める。かつて俺とルクレツィオをリンチした村人と同じように。

 その隙を狙って、"もう1人の自分"は司令官を抱えて猛ダッシュでその場を離れた。



 ◆◆◆◆◆


 

 新たに城門付近のアパートに作られた反乱軍拠点に戻った俺は、作戦の結果を反乱軍の皆に伝えた。


「躊躇うことなく、司令官ごと救世主を殺害しようとは……恐ろしい集団だ」


「優秀な逸材集まる集団においては、捕縛された司令官はただの使えない駒ということでしょうか……」


「つまり、奴らの殺害対象が1人増えただけってことかよ。救世主だったから司令官の命も助かったけど、他の奴らなら間違いなく死んでいるぜ」


「それに、人口調整が進めば1人当たりの資源や財産のパイは増えますからね」

 

 そうか。ゲリラは統括理事会の過激思想に染まった連中。殺す口実さえあれば、どんな人間でも容赦なくあの世に送る。

 理事会と教団の目的達成後は、大量虐殺によって得た利益をわずかに生き残った『優秀な人材』が山分けする。ゲリラの構成員は、少しでも人間(ライバル)は減らしたほうが良いとでも考えているようだ。


「実は救世主殿以外にも軍使や工作員をゲリラに派遣したのだが、何人かは遺体となって遺棄され、他の者も連絡が取れておらんのだ」


「そんな……!」


「だが、司令官の喪失はゲリラの弱体化に繋がっている。幾つかのゲリラ部隊は統率が乱れ、投降や全滅に至っている」


 確かに街の攻略は進んでいる。でもそれじゃ、死人が増えていることに変わりはない。俺は何のために、情報収集に奔走したんだ……。

 

「救世主たちの集めた情報も役に立っている。おかげで効率的にゲリラ潜伏地を包囲でき、相手の投降にも繋がっている」


 それを聞いて安心した。死ななくて良い人を1人でも多く助けられたのは大変喜ばしいことだ。

 だが、ゲリラの残虐性は想像を絶するものだった。結局のところ、反乱軍だけでなく、ゲリラ全員も死なずに済む都合の良い作戦はないということなのか……。


「こうなったら、理事会のビルと隠し施設を占拠するしかないねえ」


「特にビルはゲリラにとっても大きな象徴だろうから、落とせば相手の士気は一気に下がる。僕も俊の意見に賛成だよ」


 相手の士気が下がれば、降伏するゲリラ兵はもっと増える。そうすれば、今以上の殺戮や破壊は止められる。こうなった以上、ビルと隠し施設を奪うほかない。


「……その役目、俺にやらせて下さい」


 情報収集や他組織との交渉など、これまでは比較的地味な仕事をこなしてきた。だから俺も、1人の男として"救世主"にふさわしい分かりやすい功績が欲しい。

 俺はオズワルトに頭を下げて嘆願した。すると彼は「わかった」の一言で、作戦立案を開始した。


「隠し施設には理事会の兵力はほとんど残ってないが、機械兵が数体警備に当たっていると聞く。ここならば、救世主達も存分に戦えよう。ビルはゲリラが少数籠城しているそうだから、そちらは我々が引き受けよう」


「……ありがとうございます」


 頭を下げ、拠点をあとにする『空想世界研究部』の4人。俺達は市民から渡された地図に掛かれた、隠し施設(目標地点)に向けて慎重に歩き始めた。

 次回の執筆者も企画者の呉王夫差です。

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