15 援軍
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
「誰もいないじゃないですか?」
誰の声だったのだろうか。
洞窟の奥で援軍が待っていると言っていたのに、それらしき人影が見当たらない。
「やっぱりちょいと遠いけど、別のヤツらに来てもらったほうが良かったんですよ」
「ちょ、お前、聞こえるだろ!」
小声で言っても声が反響してよく聞こえる。
どうやら道中で拾われて、援軍の手配を指示された者たちの話し声らしい。
話の内容からして、期日に間に合わないのはいつものことのようだ。
「でも心配ですね。もしかしたら何か、不足の事態が発生しているのかもしれませんし」
「……戦闘が起きたか、ただの道草か。後者ならばいいが」
「あそこには、『逃走のスペシャリスト』とか言われている人もいますから、戦闘があったとしてもその人だけは生き残ってくれているでしょう」
こちらも小声だが、声が反響してよく聞こえている。
トリスタンの懸念に対しての、オズワルトと恭子の答えだが、恭子の答えが少しドライなのが気に掛かる氏景。
その表情を察してか、恭子が口を開こうとするが――――
「あー、すまねえ。遅れちまったな。あんたらが『救世主』か。よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
「なんだなんだ。えらく他人行儀じゃねえか。って、お前は元よりこっちの人間だろうが」
――――なんとも良いタイミングで到着した援軍によって、咄嗟に別の言葉を発してしまった。
後の世に発見されることになる日記によると『私の人生における最大級の不覚:その七』として記されている出来事だが、今は関係のない話である。
「改めてよろしくな、『救世主』」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
今度はきちんと部長が挨拶する。
部長たちが話をしている間、恭子はまだ隅の方です呆けていた。
だが、応援に駆けつけた者たちによって必死に宥められていた。
その甲斐もあってか、部長たちが一通り話をつけた頃には復活して、空想世界研究部の面々はようやく魔導石とのご対面だ。
「それでは皆さん。こちらへ」
洞窟の最奥、さらにその先へと通じる隠し通路を抜ける。
そこには、それはそれは見事な鍾乳石に混じって、鈍く光を発する魔導石が鎮座していた。
次回の執筆者は、企画者の呉王夫差です。