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夢を抱く少年 先達の軌跡 Glorious Feats (再投稿版)  作者: 磯別学園高校『空想世界研究部』なろう支部
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143 城壁攻略の作戦会議

 今回の執筆者も企画者の呉王夫差です。

 フリューゲルスベルクの城壁調査はその後も5日間ほど行われた。

 何しろ機械兵の襲撃との戦い。短時間で綿密な調査を行なわなければならず、作業は難航。魔力虚脱状態からの回復も考え、作業は1日おきに行われた。


 そんな厳しい状況ではあったが、アリスはその度に詳細な報告書(レポート)を残し、城壁攻略の準備は着々と進んでいった。一方で魔力虚脱状態のアリスは「不思議ちゃん」モードに戻るため、そのお世話もしなければならないのが辛いところだった。

 

 そして任務開始から10日後、俺達は反乱軍の中枢部隊の野営地に戻り、オズワルトに調査結果を報告した。


「……ふむ、城壁に大規模な改造は施されていなかったということか」


「その通りじゃ。エネルギー供給装置やフィルターの強化は行われておったがな。対空・対戦車迎撃装置も強化されておったが、魔導石はすべて取り除かれていたうえに、歩兵主体の反乱軍には関係ないじゃろうし」


 機械兵の撃退に集中していて気付かなかったが、フィルターに加えて戦闘機・戦車向けの迎撃装置なんてあったのか。

 フィルターで外部からの攻撃をよせつけず、相手の大型兵器をすべて破壊する。なぜフィルターを張った城壁が『要塞』と呼ばれるのか分かった気がする。


「どうやら、現在開発中の陸上戦艦のお披露目はまだ先になりそうだな」


「陸上戦艦!? それは大変興味があるねえ。しかし戦艦を作るとなると巨大な工場が必要になるけど、機械兵の来襲を考えるとそんな工場を用意するなんて出来ないと思うけどねえ?」


 ”陸上戦艦”なる新たな兵器に部長の目がキラキラと輝く。が、部長の懸念もごもっともで、俺も反乱軍がその問題をどう解決したのか気になるところではあった。


「皆の奮闘の甲斐あって、フセヴォロドグラートからアミリアにかけての地域は機械兵の襲撃が急減している。ただ、機械兵による空襲が無くなったわけではない」


「そこで、私と晟で地下に軍需工場を建設したということだ」


 突然オズワルトの背後から現れた近未来風世界に似合わない甲冑(アーマー)姿の女性。久々に俺達の前にオドレイが姿を現した。


「オドレイ……久しぶりだな」


「救世主、活躍は聞いているよ。聖光真聖会を反乱軍に引き入れたり、城壁の調査を行なったりしているそうだね」


「あ、ああ、どうも」


「それから、アリス・エンダーグ。私も加工技師の1人として、偉大な先達である貴方を大変尊敬している。以後、お見知りおきを」


「うむ。反乱軍には優秀な加工技師がおるようじゃな。お主の手を触ればよくわかる」


 オドレイの右手を握っただけで、彼女の技術力の高さが分かるのか。伊達にアリスも300年も設計技師をやって来ただけのことはあるか。

 そしてオドレイの発言から察するに、この世界の技師はアリスの名を知っている人が多いようだ。

 

 にしても、山野はオドレイと行動を共にしていたようだが、サキュバスとドワーフのハーフである彼女を前にしてアイツの体力や精力は大丈夫だったのだろうか?


「それより地下に軍需工場ってどうやって?」


「工場自体は一般的な工場と設備は変わらない。ただ、地下壕の奥深くに作ってあるってだけの違いだ」


「え、でも機械兵の襲撃は?」


「数が少なくなった分、通常戦力でも対処はできる。ただ、全ての攻撃を防げるわけではないから、危険がなくなったわけじゃないが」


 オズワルトとオドレイの話から、俺達がこの世界に来た当初よりは戦況は良くなっているようだ。最初の頃は少しでも大掛かりな魔力装置があったら、すぐに破壊されていたらしいから。 

 軍需工場が作れるようになっただけでも、機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナ打倒に大きく近づいたと言える。


 しかしながら、城壁以外にもフリューゲルスベルク攻略に大きな障害が残っていた。


「ただ、城壁の周辺には約100万機の機械兵が集結しておる。いかに聖光真聖会を取り込んだとて、通常戦力では城壁に接近することすら叶わぬぞ」


「なっ、100万機だと……」


 ヨルギオスの報告に、オズワルトの顔が一気にこわばる。

 確かに城壁の周りには機械兵がウジャウジャいたが、そんなに沢山集まっていたのか。というか、反乱軍の兵力って今どれくらいだっけ?


「他勢力を吸収したとはいえ、今の反乱軍の兵力は多くて15万。他方面に兵力を回すことを考えると、正面から撃ち合っても攻略はほぼ不可能か……」


「何か、機械兵を一網打尽にできる兵器でもあればいいんだけどねえ」


 そんな都合のいい兵器があるわけ……と心中でツッコみを入れると、アリスが突然「とっておきの良い兵器があるぞ」と言いだしてきた。


「フリューゲルスベルクの南西70kmに聖光真聖会の寺院がある。その寺院には、塔に似せて作った弾道ミサイル発射装置があるのじゃ」


「おお、そのようなものがあったとは! さすがは伝説の設計士、アリス・エンダーグといったところか」


「なんでそんなものが……?」


「あの街は機械兵の制御コンピュータの一部が置かれた重要拠点。万が一にも陥落しないように備えられた決戦兵器なのじゃ」


「でも、その発射装置って今すぐ使えるものなのか?」


「もちろん! 何しろ氏景や俊に会ったのも、その発射装置の手入れが終わった直後のことじゃからな」


 本当にそんな都合のいい兵器が存在したとはな。さすが異世界、俺の想像を絶するものが次から次へと現れる。さっきの心のツッコミが恥ずかしくなってくるな。


「ただ、100万機の機械兵を殲滅するには少々火力が弱い。そこで連れて行きたい者がいるのだが、よろしいかのう? 司令官殿」


「了解した。残りの者で軍需工場の建設と、付近の村の攻略を進めるとしよう」


 オズワルトに提案を持ちかけるアリス。弾道ミサイルの火力の不足分を補うために、彼女は何を考えているのだろうか?

 そして彼女は度肝を抜く人選を行うのだが、この時はまだ知る由もなかった。

 次回の執筆者も企画者の呉王夫差です。

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