11 片鱗
今回の執筆者は、猫人@白黒猫さんです。
俺がそう言い放つと周りが次第に騒々しくなっていく。
青白い光が俺の体から地面へと移動すると円形の図形や文字が現れ始めた。俺の足元に出来た魔法陣を囲むように12の小さな魔法陣が現れる。
混乱しているのに顔すら動かせない為動揺しているように見えないのだろう、俺は魔法陣に手をつき刀を取り出すと機械兵に向かって走り出した。
機械兵は俺に向かってビームを放つが、小さな魔法陣がそれを弾く。
俺は勢いそのまま大きく跳躍し機械兵の方向に刀を振り下ろす。ただ、機械兵の固い装甲は刀ごときで斬れる程ヤワじゃない。
俺は小さな魔法陣を数個周りに展開させると、それとともに刃を振るい繰り返し斬撃を機械兵に浴びせながら装甲を引き剥がしていく。
やがてバチバチと青白い電流を放ち始めた機械兵の腕を斬り落とし、続いて足も横に払うようにして斬り落とす。
大口を開けてレーザーを放とうとしている機械兵の口に刀を差し込み、そのまま上へと腕を動かすとオイルを撒き散らしながら頭部が切り開かれた。
焦げ臭いにおいが辺りを漂い始め慌てて距離を取ったその時、青白い光を放っていた魔法陣が突如消え失せ意識が遠のき始める。
体から力が抜けるのを感じ目を閉じると、誰かに抱え上げられ機械兵から距離を取った。続いて聞こえた爆音と閃光で五感が麻痺したのか、何も聞こえないし何も見えなくなったが、土煙が収まった頃には耳も聞こえるようになったし目も見えるようになった。
俺を抱え走ったのは予想通り五十嵐先輩だった。何とか意識を保ちながら周りを見回すと、恭子や山野そして木山部長が駆け寄ってきているようだ。
ただ部長の目は怪我人を気遣うものではなく、研究対象を見つけた科学者のそれで、一番お気楽だったはずの山野が一番心配してくれてるし、恭子は感動の涙で顔をクシャクシャにして何か喚き立ててるが、そんな俺に肩を貸してくれたのはリーダーのオズワルトだった。
俺は頭を下げながら先程自分が倒した巨大な機械兵の残骸を見つめる。あれほど大きく力のあった機械兵をいとも簡単に倒した英雄なわけだが、俺自身一体自分の何処にそんな力があったのか分からない上に、自分が何か化け物に見えてすうと寒気が止まらない程だった。
そんな俺の心中は誰も察してくれないかと思っていたが、どうやら皆俺の能力についてはあまり触れてこないようだ。まあもし触れられたとしてもさっきまで戦ってた俺が分からないんじゃ 、説明できる事なんて全くないんだから丁度いいか。
徐々に薄れゆく意識の中でふと視界の端に何かが映った。後ろを振り返ってもそこにはただ深く抉られたような土と残骸が残るだけだった。
俺が首をかしげながら前に向き直るとまた視界の端に何かが映る。ただ今度は確かめる暇もなく、俺の意識は徐々に薄れていった。
次回の執筆者は、月蝕いくりさんです。