1 空想世界研究部
今回の執筆者は、企画者の呉王夫差です。
時は2002年4月下旬。
雲一つない晴れ渡る青い空が広がるある日のこと。
『ようこそ、空想世界研究部へ!!』
……やれやれ、来ちゃったよまたここに。
唐突だが、俺は今月この珍妙な部活に入部した。
当然、部活が珍妙だとそこに所属の部員も奇妙キテレツな連中が集まってくる。
いつもうるさくてやかましい同級生や、文化部にも関わらず筋トレばっかやってる先輩、それに白衣を着て謎の実験をしだす部長。まともな奴からすれば、まずもって近寄りたくない不気味な部活である。
こんな感じで、最初はかなり変な部だと思ってたが、まさか後にこの部が、俺にとって大切な場所になるとは思ってもみなかった――
どうも、俺は砺波氏景、今年北海道は私立・磯別学園高校に入学したばかりの、高校一年生だ。
ついでに、誕生日は11月16日の15歳ということも付け加えておこう。
……実を言えば、俺はこの学校に入る気はあまりなかった。
本来はもう一つ、進学校として有名な公立高校・向明泉高校を志望してたのだが、1日10時間勉強したにもかかわらず、まああっさり落ちたわけだ。
つまり、今いる磯別学園はいわば滑り止め。正直、早速学校がダルい。
ついでに言うと、俺は運動はそこまで得意でもない。
スポーツも学力も中の下、凡人の極みだ。
努力だけは人一倍してきたつもりだったが、いやはや、効率が悪いのか素質が皆無なのか、あまり身を結んでない。
中学のときはバスケ部だったが、2年、3年と続けて後輩たちに、あっさりと体力、技術ともに逆ごぼう抜きの苦を受け、皆にいつもバカにされ笑われていた。
練習試合に出たことも無ければ、ユニフォームに触れたことすらない。
けど途中で辞めるのもシャクだったから、曲がりなりにも3年間、サボらずにやり遂げたがね。
さすがに高校では、運動部の環境についていけないと悟り、かといって帰宅部になるのも俺のカンに障るので、なるべく楽な部活を探してこの『空想世界研究部』を選んだのだ。
……入部届けを出したときは、こんな変な部活だとは思わなかったけど。
俺に関する虚しい自己紹介はここまでにして、今度は『空想世界研究部』との出会いについて語りたい。
俺がこの部に入部届けを出したのは、一週間前のこと。その部には三年生の2人しかおらず、しかもどちらも男子で、変人だった。
そもそも、磯別は学力のレベルはともかく、女子のレベルはやたらに高いことで有名である。
しかも全校生徒約700人中、500人が女子だ。
他の男からしたら、ハーレムみたいで羨ましい環境と言えるのかもしれない。
だけど、俺みたいな弱虫に振り向いてくれる女子なんているはずもなく、男子も絶対数が少なく、気の合う奴が皆無のクラスで俺は孤立してた。
だからせめて部活ぐらいは、仲良くなれそうな女子の1人2人なんて期待してたんだけど……。
結局、同級生の新入部員も男子で、アレだし。
つか、この部に女子はおらんかね、女子は。
彼女欲しいっす。
あっ、ついでに彼女いない歴=年齢っす。
……そういうことで、そんな悲しい欲望を抱えながら、今日も過ごしている。
まぁ、無い物ねだりしてもしょうがない。
『空想世界研究部』らしく自分の空想でも膨らますとしますかね。
次回の執筆者は、猫人@白黒猫さんです。