元服の儀 〜参〜
天正五年(一五七七)十一月十五日いよいよ、梵天丸は元服することになった。
〜梵天丸の元服の儀の会場の前で〜
家臣達が、世間話をしている。
わいわいがやはがや、わいわいがやがや
ある二人の会話です。
<某家臣Aの言葉を、「」で、某家臣Bの言葉を『』であらわします。>
「遂に梵天丸様も元服かぁ。」
『そうだぞ。あのお方は、御大将の器ありと言われておるお方。
初陣の折には真っ先に馳せ参じねば。』と勇んで言う。
「しかし、義姫様に疎んじておられるからのう。」と案じている。
『しかし殿は梵天丸様に期待を寄せておられるぞ。
梵天丸様は、詩に、連歌に、能や、茶道にまで嗜み深いと言われておる。』
「うむ。しかし、竺丸様に継がせようとするものも居るようじゃからのう。」全く困ったものだと言いたげであった。
『しかし、それは、この元服で決まるはずじゃ。』
「うむ。確かにそうじゃ。梵天丸様が、総次郎様か、次郎様又は、藤次郎様
という通称になられし時は殿がなんとしてでも継がせるとのお気持ちが、
他の者達にも分かるであろうからのう。」
『そうぞ。そこでお家を継ぐお方が決まったと言う手もいいであろう。』
「義姫様のお邪魔が入ったらどうなるじゃろう。」
『邪魔が入っても必ずだ。』
「おっ。もう始まるようだ。」
と、某家臣たちの会話はひとまず終了した。
まっそんなこんなで、元服の儀が始まり、進んでいく・・
そしていよいよ名が発表された。
「梵天丸よ、そちの名を藤次郎政宗とする。」
と、言われると梵天丸、いや政宗は、
「はい。名に恥じぬよう励みまする。」
と言う。
こうして、晴れて元服した。
また、某家臣たちがしゃべりだした。
『やはりな。梵天丸様に、殿が如何ほどの期待が寄せ
ておられるかが皆に分かった。』
「そうだのう。やはり、藤次郎様という称だけではなく、
あの政宗様の御名まで頂かれたからのう。」
『そうじゃ、そうじゃ。これで御家安泰じゃ。』
「そうじゃのう。励まねば。」
というふうに、皆が言っていた。