No,2 集合
翌朝、ミラは配属先の班の下へ足を運んだ。
通常一つの班には3人の武術部隊の者と3人の魔術部隊の者たち計6名が一つの班となり仕事をする。
ミラが配属されたのは第126班だ。
しかしなかなか配属先の班の下へとたどり着けない。
何せこの地区の軍だけで200を超える班がある。その中から一つの班を探すことなど、至難のわざである。
ミラが班が見つからず探し歩いていると、見知った顔を見かけた。
「やっほーフレディ!元気ぃ?」
ミラは何気ない調子でフレデリックに話しかけた。
「やっほーじゃないだろ!?もう班の集合時間はとっくに過ぎているんだぞ・・・さっさとしろ。」
フレデリックはミラの頭を結構強く叩くと、そう怒鳴り付けた。
「だってフレディ。配属先の班が見つからないんだもん。」
フレデリックはそれを聞くと少しの間静かになった。そしてフレデリックは急に笑い始めた。
「フッ・・・ハハハハハハッ!」
「な・・・何よ!そんなに笑わなくったって良いじゃない。」
ミラはフレデリックが急に吹き出したのを見ると、少しむくれた調子になり不機嫌そうな顔になった。
「いや・・・悪い悪い。ちょっと昔のことを思い出して・・・・・」
フレデリックはそう言うとミラの方向を向いて真剣そうな顔つきになった。
「ところで、フレディも今日から新しい班になるんだよね?こんなところで何してるのさ・・・新しい班に行かなくて良いの?」
ミラはフレデリックが急に真剣な顔つきになったのに内心戸惑いつつ、話を切り替えるようにそう言った。
「俺はもう配属先に行ったぞ。でもな、そこで新人が一人居ないことに気付いて探しに来たんだよ。」
フレデリックは不気味な笑みを浮かべると、少し笑いをこらえながらそう言った。
ミラはフレデリックの態度に何かを感づいたらしく、苦笑いを浮かべると、
「ねえフレディ・・・その新人ってまさかと思うけど・・・・・」
できればこのカンが外れることを願いつつ、細々とした声でそう言った。
「なんだ・・・お前にしたらカンがいいな。」
フレデリックは再び不気味な笑顔を浮かべ、首を縦に振った。
「俺の新しい配属先は第126班だ。」
それを聞いた瞬間ミラは絶望的な顔を浮かべるとこれからの生活に待っていることを想像した。
フレデリックに連れられて、ミラは配属先へ向かった。
最も、ミラの頭の中は口うるさいフレデリックが同じ班ということによるこれからの生活の不安と、そう思いながらも信頼している兄のような人が一緒という軽い安心感が混ざりあっていた。
「遅れてすみません。この不良娘を連れてきました。」
フレデリックがそう言うと辺りにいる全員がフレデリックの方向を見た。
「お!見つかったか。」
一人の男がそう言って近寄ってきた。
見た目は30代後半くらいに見える顔つきで、眉毛が繋がりかかっている。
しかし、いかにも軍人という感じのする体格に雰囲気をまとっており、眉毛は誰も突っ込めずにいるようだ。
「遅れてすみませんでした!配属先の班がどこにあるのか分からない間に迷子になってしまい、今に至ります。」
ミラはそう言うと改めてお辞儀をしてそう言った。
「ああ・・・良いってそう堅苦しくならないの。」
ミラの態度を見て一人の20代後半くらいの金髪ロングの女性がミラの肩をポンッと叩くとにこやかにそう言った。
「私はレミ・ラクチャーよ。よろしくね。」
レミと名乗った女性は片手を前に出しミラに握手した。
雰囲気的には頼りになる姉御肌タイプの人という感じがする。
「実はここにいる全員が入隊初日の遅刻経験者なのよ。だからだれもミラちゃんのこと咎めたりしないわよ。」
レミはミラにそう言うとウインクをして背中を叩いた。
ミラは最初はそうなんだ・・・という顔をしていたが、途中で目を見開いた。
「え!?じゃあもしかしてこの堅物もですか?」
ミラはフレデリックを指差すとそう言った。
「お前・・・仮にも先輩に向かって何だその態度は・・・・・」
フレデリックはそう言うと呆れたということを顔で表現しながらため息をついた。
「えぇ、そうよ。フレディと私は前同じ班だったのよ。ちなみにこいつも迷子になってたわ。」
それを聞いてミラはさっきフレデリックがあんなに笑っていた理由を納得した。
恐らく2年前の自分を思い出していたのだろう。
「俺の一番の黒歴史を・・・」
とぶつぶつ言ってるフレデリックを無視してミラはレミに聞いた。
「ちなみにレミさんは何で遅刻したんですか?」
レミはそれを聞かれた瞬間、かなり決め顔を作ってこう言った。
「私は普通に寝坊したわよ。」
ミラはそれを聞くと心の中で(決め顔作ったわりにしょうもないな)と思ったが流石に口には出さなかった。
「さあ、くだらないこと言ってないで自己紹介するぞ。」
さっきの眉毛繋がり男が割って入ってきた。
「俺はロン・ブラウン、一応この班の班長だ。ちなみに遅刻の原因はトイレだ。」
と、ロンは報告しなくていいことまで報告した。
ミラはひそかにこの班・・・・・大丈夫か?と思っていたのは秘密である。
ミラは寮の自室に戻るとベッドにダイブした。
「はあああぁぁぁ・・・・・疲れた。というか話長かったな。」
というのも、班での集まりのあとすぐに任務についての説明ということで軍に召集されたのだ。
今回の任務は第120班から第140班の合同のものだった。無論、第126班の班員であるミラも任務に召集された。旅支度をし、明日の朝7:00に集合だった。
ミラは明日は遅刻しないぞ、と心に決めて明かりを消して寝た。