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プロローグ
壊れてしまう、その前に温めあえたなら。
お互いの想いが、あるいは、身体が壊れてしまう前に……大切な人と温めあえたなら。
瞳を閉じて、君を想う。
瞳を閉じれば、瞼に焼き付いている君に会えるから。
この世界は、見る必要の無いもので溢れていた。
君の記憶はどんどん、消えていくのに……くだらなくて、どうでもいい記憶が、頭の中を占めていく。
塗りつぶされていく。君じゃない、色に。――染まっていくんだ。
やがて君の姿は、僕の中にあるブラックホールへと吸い込まれていく。
――だから、壊れてしまうその前に、行動に移さなければいけないんだ。
プライドとか、世間体とか総て投げ捨てて、温めあうことだけを考えて。