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2つの手  作者: テバサキ
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第1章 「私は壊したくない……」

――15年後 現在――

「……ことを、願いながら――」


この小さなコリル村に小さな木に寄り添いながら本を音読しているのだろう。


少女の左手にはベージュ色のした革の手袋をはめている。時折空を見つめ、首を休ませながらその赤色の瞳で本の文字を目で追って今度は目読をしている。


…とそのとき寄り添っていた木の後ろから「おいぃニサナぁ~」と中年ぐらいの体のしっかりした男の声が降りかかってきた。


「ぅわぁっ!おじさん!!いたの?」


「何がいたの?だ!今日はウォルタ王国から新しい本がジャンッジャン入荷してくるんだ。手伝わねぇと家に今日中では帰れんぞ。」


そうだ。そういえば今日ウォルタ王国という水源の都からハンズ城下町を通りこのコリル村に新しい本の入荷日だったことをすっかり忘れていた。


なんせこの村の書籍の館にたくさんの本が来ることは珍しいものなのだ。


「あ…あぁそっか今日はその日だったっけ……」


「あぁそうだっそれをお前はこの日に限って本を……何だまたそれを読んでるのか。お前はよくその本が好きになれるなぁ」


男はそう言って自分の頭をかき回した。


「ん~~ 好きって訳じゃないんだけど、なんとなく気になるんだよ~」


ニサナはまた手に持っていた本に目を通す。


「この本お母さんからもらった本だから……」


「……まあいい、そらいくぞ。早くしないとキールの野郎に怒られる。」


男は後ろに振り向き書籍の館の道へ歩き出した。ニサナもそれに続いて歩き出す。


小さなこのコリル村で最も大きい建物であるこの書籍の館にニサナはよく手伝いをしに来ることがある。そしてこの建物の主人は手前で歩いているがっしりした体格の男。名はダッケル・フリース。歳は37・8といったところだろう。


髪は青く、背が高い。瞳も青で顎鬚が立派に生えている。ニサナが両親のことを想い、泣いているところをよく慰めていた。

ダッケルは二サナが幼い時に孤児院にいたところを引き取り、いまも館で現役主人を続けながら一人でに二サナを育ててきた。今では父親のような存在なのだろう。


そしてダッケルの後ろを歩いている少女、二サナ・アイ。15歳。赤い瞳にベージュの革手袋を左手にはめ、髪は長めのクセっ毛があるようで平和主義者だ。外出時や館の手伝いの時以外には、いつも片手に形見である本を常に持っている。


二サナは幼いころに両親が何者かに襲われ、殺されている。二サナは両親の思い出こそ無かったものの、唯一覚えているのは母から読んでくれていたこの本だけでしかない。両親が殺され、数日後孤児院に引き取られるときも、引き取られた後も、この本だけは目に涙を浮かべながら手離さなかったらしい。ただそれだけだった。


「よし、着いたぞ。っといたいた」


ダッケルは館の前にいるキールを見つけとっさに「おーい。キール」と呼びかけた。


ダッケルの呼び声に気付いたのか、こちらに振り向き「おー、ダッケルやっと来たか。もう少し遅れたら激怒してたところだぞ」と笑い気味に言った。


「少し遅れただけで激怒は無いだろ」ダッケルは苦笑いをし、言葉を投げあった。


「キール兄さん!」ニサナは嬉しさのあまりキールに飛びついた。


「おおっと。ニサナ、久しぶりだな。元気にしてたか?」


キール・ランディはダッケルとほぼ同い年で親友だ。金髪で髪は長く後ろに縛っていて瞳は青紫だ。背はダッケルと近いが鬚は無い。体格は普通のほうだ。前にダッケルと同僚として一緒に働いていたが、急に村を越さないといけないという理由で村を離れてしまった。だが、書籍の館が大きくなると聞いて急遽この村に戻ってきたのだ。


「うん!またキール兄さんに会えたぁ!ねぇ、キール兄さんの生活はどう?越した所ってどんなところなの?」


ニサナは唐突に聞く。


「あ、あぁそうだな。まぁ良い生活はできてるよ。越してすぐに良い仕事を見つけられたからな。しかも場所はハンズ城下町だしな」


「へぇ~~、城下町なんだぁ。いいなぁ。私も行ってみたいなぁ」


キールは次に不審な顔をして続けた。


「だけど最近少し物騒な噂があってね……」


「え?」


キールはさらに続けようとしたが、大量の本を詰め込んだ荷車を馬が引いており、書籍の館の前で停止した。


「お、ようやく着いたみたいだぜ」


ダッケルが言って荷車のほうに歩み寄った。


[ウォルタ王国の者だ。書籍の館はここでよろしいか?」


荷車に乗っていたウォルタ兵士が尋ねた。


「ここで間違いありません。兵士殿、ウォルタ王国から遥々このような村へ、しかもこの量の本のご配達ご苦労様です。こちらへお止めによろしくお願いします」


ダッケルは兵士の荷車を止めに案内した。


「おーい。ニサナ、キール。これから相当大変だぞー。運んでくれぃ」

「わかったぁーおじさん。いこ、キール兄さん」

「よーし。即行で終わらせるか」


ウォルタ王国兵士は荷車を止め、明日にはくると言い残して去っていき、3人は荷車にある大量の本を館へ運び整理して大体の作業を終わらせたころにはもう日が落ちてきていた。


「キール兄さん、今日は泊まって行くの?」

「あぁ、今日は館に泊まっていくよ」

「それじゃあ、明日も会えるんだね」

「そういえばキール。作業する前に物騒な噂が有るとか言ってたよな?」


ダッケルはキールにそれは何だと問い詰めた。


「そうだ、まだ言ってなかったね」


とキールはまた不審な顔を浮かべてその物騒な噂話をはじめた。


「あくまで噂なんだが、ハンズ城下町地下から獣人が脱走したらしい」


「マジかよ…」


「獣人てあの…地下で働かされてる人たちの事でしょ?何で脱走したの?まさか…人間への復讐とか…?」


キールは続けた。

「いや、そうでもないらしい。脱走の途中、人々が急に魔族から襲われたんだが…」

「それって、危ないんじゃん!獣人が脱走して魔物にも襲われてさ!」

「まぁニサナ、落ち着いて聞いとけ」


ダッケルはニサナを落ち着かせ、キールに進めるよう言った。

「そう、危なかったみたいなんだ」

「危なかったみたい?」


ニサナはオウム返しに問い返す。


「あぁ、危なかった。だが、その獣人は人々が襲われた魔族を見るとその魔族を蹴散らして襲われた人々を守ったらしい」


「へぇ~~すごーい」


「でもなぜ脱走したかは分からないんだ」


「で?その獣人はどうしたんだ?」


「その獣人は何も言わずに城下町の外へ飛び出したんだ。今もまだ、逃げ続けているらしいな」


噂を聞いていた2人は、少々驚いていた。獣人が人を守ったというとこで、確かに獣人は仲間意識が強いため味方に危険が生じると味方同士協力し合うものなのだが、獣人に限って人々を守るという行動は滅多に無いはず…。


「なるほどな。一度その獣人に会ってみたいもんだぜ」


「まぁ会えるかはどうだろうな。なんせ『噂』だからなぁ」


それもそうだといい、3人はダッケルの邸宅へ向かった。


「よしニサナ、今日は疲れたろう」

「うん、あんな荷物の量…もうクタクタだよ~」

「そうだな…もう遅い。今日は寝て朝すっきりな」


どうやらダッケルも相当な疲れがたまっているのだろう。ダッケルの目が衰えて見えた。


「おやすみなさーい、おじさん」

「おう、ゆっくりな」


ニサナはダッケルが去るのを確認すると自室のベッドに座り、部屋にある本棚から『獣人』と書かれた本を取り出した。

目次から『獣人の存在』のページをめくり小さな声で音読を始めた。


『獣人とは人であって人ではない、言葉を交わすが元を正せば獣である。人々は獣を恐れ・拒み・隅へ追いやった。人々は獣に冨を作らせ、獣から権利をも奪った、獣から人々の身を守るために』


「……身を守るために」この時、ニサナは1つの疑問を抱いた。

(何で人々は隅に…?やっぱり獣…違う、獣人から怯えてたの??でもあの噂では、人々を守ったでしょ??)


ニサナは頭をこんがらがせながら本を置き、座っていたベッドの横になった。

(もう…いいや。寝なきゃ)

そう思って目を瞑り、深い眠りに寝入っていった。

どうでしたか?

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