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31.墓参り

 都内の霊園は、日が傾き始める穏やかなひとときの中で静かに佇んでいた。

 木々の枝はすでに葉を落とし、裸のまま灰色の空に向かって広がっている。

 苔むした墓石や、まだ新しさを保つ墓石が混在し、それぞれが異なる歴史を語っている。

 霊園には人影がなく、澄んだ空気がただ静かに漂っている。


 石河優唯(いしかわゆい)は、赤いロングコートを身にまとい静かに歩みを進める。

 彼女の後ろをマネージャーの岩見愛花(いわみまなか)が付き従う。

 二人の間に言葉はなく、微かな足音だけが石畳に染み込んだ。


 二人は、とある墓の前で立ち止まる。

 その墓石には『内山家之墓』と書かれていた。


 内山幸喜(うちやまこうき)の四十九日。

 親族による納骨は午前中に行われた。

 石河はスケジュールの都合で参加できなかったが、墓参りだけはしたいということでやってきたのだ。


 石河は静かに息をつきながら内山との思い出を振り返る。

 すると、自然と冷たく厳しい表情が浮かんでしまう。

「私、彼のこと嫌いだった。――どこか、いつも斜に構えていて、人を見下したような態度。世の中を全て理解しているとでも言いたげな口元なんか、見てて腹が立ったわ」

「優唯、口が悪過ぎよ」と、岩見マネージャーは苦笑いする。


 石河は、内に溜まったうっ憤とともに、ふうと一息吐いた。

「あの島での出来事、今でも忘れない……。勝手に犯人と交渉してロケを進めるなんてありえない。理由が売れたいからって自分勝手が過ぎるでしょ。千羽さんと喜岡さんが怪我をしたのも、全てあいつのせいよ」


 岩見マネージャーは寂しい表情になる。

「気づいてないの? 内山さん、優唯のことが好きだったのよ」

「そんなわけないでしょ、あいつ、いつも私に嫌なこと言ってたじゃない」


 岩見マネージャーは、報われない内山にたいして同情の溜息を吐いた。

「二人とも子供なんだから……。優唯が犯人捜しをしようとするから彼が無理をして矢面に立ったんじゃない。それに、警察を痛烈に批判した記事も、テレビ出演も、優唯を犯人から守るためにしたことよ」

「えっ?!」

 石河は酷く驚きながら岩見マネージャーを凝視する。


「千羽さんや、幹マネージャー、それに私と連絡を取り合って警戒するよう注意してきたのも内山さんよ。――彼、喜岡さんの事故を防げなかったって、とっても悔やんでいたわ。責任、感じていたんじゃないかしら……」

「ありえない……、ありえないわ! そんな素振り、見せたことない」

 石河は動揺しながら首を振る。


「彼は役者だから、心の内を隠すのは得意なのよ」

 石河は、彼を思い出しながら、静かに佇む墓石に視線を移す。


「優唯のメンタルが弱いこと、彼は知っていたわ。激しい言動は心を守るための鎧で、内心はとても繊細な女の子なんだって。そのギャップにひかれたらしいわ」

 岩見マネージャーは、自分の発したギャップという言葉に、――内山さん、変な趣味――と思い、微笑んでしまう。


「ちょっと、どうして私に隠してたの?」

「優唯がちょろい子だからよ。もし彼のこと教えたらコロッと堕ちそうだもの。マネージャーは恋愛の後押しができない立場なのよ」

「それじゃあ、内山さんが死んだのは私のせい?」

「ほらぁ~、すぐに悲劇のヒロインを演じ始める。だから隠してたの。悪いのは全て犯人、優唯は関係ないわ」


 石河は納得できない面持ちで墓石を見つめていた。

「どうして話したの? 知らなければ悩むこともなかったのに……」


 石河の問いに、岩見は静かに微笑む。

「確かに、知らなければ悩むこともなかったかもしれない。――でも、優唯はこの先も女優として生きていく。避けられない痛みなら、私はあなたに経験させたいの」


 石河は驚きながら岩見を見つめる。

「そんな……、わざわざ苦しませるために?」

「違うわ。優唯は心が繊細すぎるの。だからこそ、強くなる必要があるのよ」

 岩見は手を伸ばし、石河の肩にそっと触れる。「内山さんの死は、優唯のせいじゃない。だけど、彼がどれだけあなたを大切に思っていたか、その気持ちを知ることで、優唯は一歩先に進めるはずよ。女優としても、人としても」

「そんな簡単に割り切れないわ……」そう言い、キュッと唇を噛む。


「割り切らなくていい。――でもね、優唯が感じたこと、迷ったこと、傷ついたこと……、全部、あなたの演技の糧になる」

 岩見は微笑みながら続ける。「いい女優になりたいんでしょう? だったら、痛みを知って。――愛されること、失うこと、何が本当に大切なのかを噛みしめて」


 沈黙が流れる――。墓前の風が、そっと二人の頬を撫でた。


「私はね、優唯のためなら、なんだってするつもりよ」

 岩見の瞳は静かで、揺るぎない決意に満ちていた。「これからも、優唯を支えるわ。あなたが立派な女優になるまで」


 石河はゆっくりと息を吐き、熱く潤んだ目を閉じる。

「……ありがとう、岩見さん」

 心の奥に残る痛みは、まだ消えない。

 でも、進まなければいけない。そう思った。




 風がさらに強く吹き、木々の枝がざわめいた。

 その中を歩いてくる影が一つ、助監督の並川大助(なみかわだいすけ)だ。

 彼は柔らかな微笑みを浮かべながら、静かに近づいてきた。

「お二人とも、ここにいらっしゃるとは思いませんでした」

 いつもと変わらない穏やかな声だ。


「こんばんわ。並川さんもいらしたのですね」

「ええ、まあ。彼の四十九日でしょう? 監督は忙しくて来れないみたいだから、せめて私だけでも、と思って」

「親族の方は昼間にいらしたみたいですね。私たちは抜けられない仕事でご一緒できませんでした」

「そうですか……」

 並川も墓前で手を合わせるだろうと思い、二人は墓の前をあける。しかし、彼はなかなか近寄ろうとはしない。



 謎の沈黙に気を遣う岩見マネージャーは話題をふってみる。

「<大束スタジオ>大変そうですね」

「いやはや、まいりました。うちの若い奴らが、あんな……。その節はご迷惑をおかけしました」


 岩見マネージャーは数カ月前の出来事を思い出しながら溜息を洩らす。

「結局、あの島での出来事は、内山さんの推測通りだったんですよね……」

「はい。彼の推理力は素晴らしかった」


「――そうかしら?」

 と、墓石を見つめながら石河が「彼はトリックの解説をしただけ。犯人の絞り込みも、犯人の動機も、なにひとつ解き明かしてないわ」


「それは、あの場で犯人捜しをすれば危険だったからよ」と、岩見マネージャーが困った顔で言う。


 石河の瞳がキラリと輝く。

「いいえ! 内山は、犯人グループのひとりなのよ!」

 と、彼女は決め顔で墓石を指さす。「あの島で犯人捜しをしなかったのは、仲間を守るためだったのよ!」

 もしテレビドラマなら効果音が鳴っただろう。


「何言ってるの優唯。内山さんは犯人に殺されたのよ?」

「彼は小心者なの。――犯人が喜岡さんと千羽さんに怪我を負わせたのを知り、怖くなったんだわ。だから真相を暴露して警察の保護を求めたの。――けれど、裏切り者として制裁されてしまった」


 そう断言する彼女を見て、岩見マネージャーは感心する。

 ――推理音痴の優唯が、筋の通った推理をするなんて、雪でも降るのかしら? でも、内山さんの恋心を教えたのに、まだ彼のこと悪く思っているのね……。

 そう、岩見マネージャーが思っていると、本当に雪がちらほらと振り始める。


 そんな石河を眺めながら並川はクスクスと笑い始めた。

「ホント、石河君はユニークですね。――では、犯人の動機は?」

「簡単よ! 映画を失敗させたかったんだわ」


 並川が目を見開く。

「ほぅ、失敗?」

「言葉が足りなかったかしら。……そうね、大束監督のネームバリューを失墜させることが目的だった! そう言うのが正しいかしら」


 並川の眉毛がピクリと動く。


 彼女は得意げに推理を進める。

「あの島で神戸さんを殺したのは、映画の完成を中断させ、監督の経歴に未完成の文字を刻みたかったのよ。でも磐田さんが許さなかった。だから彼も殺した。喜岡さんと千羽さんが襲われたのは……そうね。映画が酷評され、犯人の目的はある意味達成された。でも、人の噂も七十五日って言うでしょ。マスコミもすぐに報道しなくなった。だから再び注目を集めるために俳優を襲ったんだわ」


 静寂を切り裂くような爆笑が墓石の間にこだました。

 湿った土の上で靴音を響かせ、並川は肩を震わせる。

 まるで堪えきれなかったと言わんばかりに。


「ちょっと!?」

 石河は目を丸くし、岩見マネージャーは唖然と口を開けたままだ。


「いや、悪い、悪い……」

 彼は息を切らしながらお腹を押さえる。「あまりにも荒唐無稽で、バカバカしくて、聞くに堪えられないよ」


「間違えているって言いたいんですか?」

「ああ、間違えている、大間違いだ」次の瞬間、突然声が張り上げられ、激昂が滲み出る。「彼らが監督の名前に泥を塗るなんて、するわけがないっ!!!」

 その叫びは墓地の静けさを突き刺し、冷たい空気を震わせる。

 彼は石河をにらみつけ、息を切らしながらも目を離さない。


「私たちは監督の作品を愛している。誰よりも……誰よりも、だ! ――それなのに、失墜させるのが目的だとっ、ふざけるなっ!!!」

 住職のように温厚だった彼が、信じられないほどの怒りで体を震わせている。


 石河と岩見マネージャーは恐怖で体が動かない。

「――あ、あのっ……す、すみません、うちの優唯が、その、失礼な発言を、してしまって、申し訳ございません」

 岩見マネージャーは、声を震わせながら謝罪の言葉を絞り出す。


「なら、どうして撮影では手を抜いたの?」

 石河は、彼の視線を正面から受け止めている。


「なんだとっ?!」

「私は期待してたの。噂に名高い<大束スタジオ>の映画に出演できることにね。――でも、スタッフたちのモチベーションは最低だった。なぜかしら?」


 彼は、大きく息を吸い込むと、怒りとともに力強く吐き出した。

 そのおかげで、わずかだが冷静さを取り戻した。

「クソ原作のせいだ」

「え?」

 聴き間違いだと思い、石河は聞き返してしまう。


「三流原作のせいだと言っている」

「二流だろうが、三流だろうが、大人なら受けた仕事は責任をもってやり遂げてほしいものだわ」

「受けたんじゃない、受けさせられたんだ」

「どういうこと?」


 彼の表情が、怒りではなく、悔しさに塗り替えられていく。

「磐田の野郎、監督を脅迫したんだ」

「えっ?」

「監督のお孫さんが写っている写真を持ってきて、週刊誌に出されたくなければ仕事を受けろってな」


 どのような写真なのか、彼は言わない。それはお孫さんへの配慮だ。

 脅迫に使われるほどの写真。石河と岩見マネージャーは彼の気持ちを察し、表情を強張らせる。


「お嬢さんを黒く塗りつぶして、背景の部屋に見覚えがないかって聞いて回ったよ。そうしたらすぐに神戸の部屋だって判明してな」


 石河は厳しい表情になる。

「神戸さんが撮影して、写真を磐田さんに渡したということ?」

「いや。磐田が神戸のマンションを訪れたときに書斎に忍び込み、偶然動画を発見したそうだ。ファイル名がお嬢さんの名前だと気づき、動画をスマホで撮影したと死ぬ前にベラベラと話してたよ」


 石河は眉をひそめ、疑問を抱くように彼を見つめる。

「死ぬ前? ――スタッフから事情を聞いていたのに、あなたは隠していたの?」

「スタッフから聞いたんじゃない、私の目の前で自白したんだ」


 その言葉は彼女の胸に強烈に響き、驚きと混乱の色が顔に広がる。

 目を見開き、言葉を失ったまま、どう反応していいか分からない様子で立ち尽くす。

「まさか、あなたも犯人なの?」


 並川は高らかに笑う。

「私が首謀者なんだよ。探偵気取りの内山も、無能な警察も、最後まで私が犯人だとは見抜けなかったようだがな」

「まさか、監督も?」

「監督は関係ない!! 全て私たちがやったことだ!!」

 霊園に響き渡るほどの大声で叫んだ。



 並川は、冷静さを取り戻すため、ふぅと息を吐いた。

「おっと、勘違いしないで欲しい、一人だけ罪から逃れようなんて思っていない。復讐をやり遂げてから自首するよ」

「復讐?」


 並川は、ゆっくりとした動作で手をポケットに入れながら続けた。

「撮影の中断を阻止したのは、おまえたち俳優だろ。ご大層な講釈を並べて、最高の映画を作るんだと息巻いて、それが結局あの酷評だ。監督の名前に泥を塗ったのは許されない罪だ。クソ映画に協力した俳優たちに罰を与えなきゃ気が済まないだろう? おまえたちのような俳優が、これから作品を残すなんて、日本映画界の病巣でしかない。だから俺が切除してやろうってことさ」


 並川は隠し持っていたナイフをポケットから取り出すと、二人に襲い掛かる。

 振りかぶった切っ先が頭上から迫る。

 岩見マネージャーは、並川の前に立ちふさがると両手を広げて石河を守る。

 するとナイフは彼女の肩に深く刺しこまれた。


「岩見さん!」

 石河は咄嗟の判断で、並川の腹部に強烈な蹴りを命中させた。

 その力はハイヒールが折れるほどの衝撃で、彼は仰向けに倒れる。

 頭を強く地面に打ち付けた並川は気を失ってしまう。


「大丈夫? 岩見さん! 岩見さん!!」


 肩にはナイフが深々と刺さっている。もし抜けていれば出血が酷くなっただろう。

 岩見マネージャーは地面に崩れ落ち、息も絶え絶えに、痛みに我慢する。

「優唯、私は大丈夫。お願いだから早く逃げて」

「ダメ、置いていけない」

 石河の目から涙が溢れている。


「優唯、あなたは強い女優。ひとりでも大丈夫。さあ、復唱して、私は強い女優」

「嫌よ! 私の弱い心を、いつも支えてくれたのはあなた。ひとりじゃ生きていけない。お願い、一緒に逃げて」

「無理言わないで。もう、目が霞んで、良く、見えないの」

「岩見さん! 岩見さん!!」




 軽く気を失っていた並川が目を覚ます。

「クソアマァァァァ! 絶対許さない!!」

「それは俺の台詞だ」


 並川が振り返ると、そこには死んだはずの内山が、堂々と立っていたのだ。

 彼の姿は、映画の賢者そのもので。いや、映画よりもリアリティのある汚れ方をしていた。そう、まるで本物のような。


「内山?! キサマ死んだはずだ!」

「そんなフレーズ、ダサすぎてきょうび聞かないぜ。アンタ助監督の才能ないわ」

 ふてぶてしい態度は内山そのものだった。


「ふざけるな! 衣装を勝手に持ち出して、いったい何のつもりだ」


 内山は鼻で笑うと杖の先を地面に叩き付ける。その音は、まるで金属のように高く澄んだ音色を奏でた。

「いい音だろ、この杖は聖霊樹から授かった本物だよ」

 彼は華麗にくるりと回る。するとローブが風になびき幻想的な雰囲気を漂わせた。

「あんたの手下に殺された俺は、マジで異世界に転移したんだよ。そこで魔王を倒し、三年ぶりに帰ってきたのさ」

「三年? おまえが死んだのはひと月前だ」

「時間の流れが違うみたいだな。――まあ、そんな些細なことはどうでもいい。俺はアンタが許せない、ここで消し炭になってもらう」

「虚言癖のコスプレ野郎に、そんな真似ができるわけないだろう、いいぞ、やってみろよ」


 並川は冷酷な笑みをうかべながら、手を広げ、彼を挑発する。

「ほらよ、やれよ、さっさとやれよぉ」


「待て内山!」

 遠くから、古西勝之(こにしかつゆき)宇枝怜菜(うえだれいな)が走ってくる。


 そんな二人を見た内山は大声で笑いだした。

「どうしてサスペンスドラマの最後は登場人物が集合するんだろうな。これってお約束?」

「黙れ! ――並川、女性への傷害容疑で現行犯逮捕する」



 並川は抵抗することなく、驚くほどあっさりと手錠をかけられた。



「くそっ、警察とグルになって死亡まで偽装するとは」

 並川は悔しそうに内山をにらんだ。


 驚いたのは古西だ。

「警察は関与してないが」

「え?」

 その場にいた全員が驚きながら内山を見る。


「だからぁ、俺は異世界に転移したんだって」

 内山は弱々しく息をしている岩見マネージャーに近づくと、宝玉のついている杖を傷口へ近づけた。


「痛いっ! 痛いっ! あれ、痛くない?」

 肩の傷が修復されるにつれ、深く刺さっていたナイフが押し出され、地面に落ちた。


「え? は? なに?」

 目の前で信じられない光景を見せられた石河が困惑の表情をしている。


「俺は賢者だかなら。魔法だよ、魔法」

「嘘でしょ?」

 彼は多くは語らず、笑顔になると、

「さて、こちらの世界で残された時間は、あと僅かなんだ」

 彼は姿勢を正すと石河の前に立った。

「俺は石河優唯さんが好きです。あなたに会うために必死で魔王を倒しました。どうか、俺と結婚してください。そして、異世界で俺と一緒に生活してください!」

 頭を下げ、手を彼女の前に出す。彼の声は真剣で、嘘や冗談とは思えないほど真実味をおびている。


 石河は周囲を見回した。

 古西刑事は亡き妻を思い出しながら何度も頷く。

 宇枝刑事は親指を立て『行け』とメッセージを送る。

 並川は見ていられるかという表情でそっぽを見ている。


 岩見マネージャーは、

「優唯、あなたの好きにしていいのよ」と、優しく声をかけた。


 石河は、胸を張ると元気な声で、

「私は女優よ! 異世界なんて行くわけないじゃない!」と、微塵の迷いも感じさせないのだった。


 並川はザマーミロと言わんばかりの笑顔になり、他の人たちは深いため息を吐いた。


「それでこそ、俺の大好きな女優だ」と、内山は精一杯の強がりを見せたのだった。

「だから言ったじゃない、無理だって」

 そう言いながら姿を見せたのは喜岡麻結(よしおかまゆ)だ。


「あなた怪我は?」

「もちろん内山さんに治してもらったわ」

 太陽のように輝く笑顔はアイドルそのものだった。「さあ、行きましょ」

 喜岡は、まるで恋人のように内山の腕に絡みつく。


「行くってどこへ?」

 石河の声には、かすかに嫉妬の炎が見え隠れしている。


「もちろん、異世界に決まってるじゃない!!」


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