7:騎士セシリオ。
着替えを済ませて、騎士様の身体の血や汚れを拭いながら、何があってこんなことになっているのか聞きました。
どうやら真実を見抜く聖女が、かなり暴走しているようでした。
「あらまぁ……」
「貴女が王都を去って数日で、教会の草木が枯れ始め、井戸は濁り出しました。そして、緩やかではあるものの、教会の建物が風化し始めています」
――――やっぱり。
「それら全てが、貴女の呪だと真実を見抜く聖女が言い、貴女を討伐するための隊が騎士たちで組まれかけたのですが、他の聖女や見習いたちによって阻まれました」
「え……討伐…………もしかして、セシリオ様の怪我はその時に!?」
「あ…………いえ。これは盗賊の集団との戦闘で」
セシリオ様いわく、真実を見抜く聖女に加担する騎士団に違和感を覚え、一人で私を探しに出たのだとか。
その道中で村を襲う盗賊の集団と出くわしてしまったそう。ほとんどの盗賊は倒したものの、この大きな怪我を負ってしまったのだとか。
村人に助けてもらいギリギリ一命を取り留めた時に、その村人から私のことを聞き、ここまで来たとのことでした。
騎士様たちで編成された討伐隊。
真実を見抜く聖女の暴走。
セシリオ様の怪我。
もしかしたら、セシリオ様は私を討伐しに来たのかしら? と、一瞬だけ考えてしまいました。
普通ならば、そんな都合の良い話は疑うべきなのだと思います。真実を見抜く聖女の手先ではないか、と。
でも私にはそれが出来ませんでした。
琥珀色の髪の騎士――セシリオ様は、私の初恋の人なのです。
彼は、いつでも空色の瞳を真っ直ぐに向けてきます。怪我の治療後にはいつも「ありがとう、貴女が側にいてくれるだけで、心が安らぐよ」なんて真顔で言ってくださっていました。
私の力は、何となく怪我の治りが早いかも? くらいにしか認識されていませんでした。治療院で、ただのんびりと過ごしているほぼ無能な聖女だと、大半の人には思われていたんだと思います。
私もそれを望んではいました。
治癒が使える聖女は時折いたようですが、力を使いすぎて心身ともに疲れ果て、短命になることが多かったのだとか。
なるべく能力を使いすぎないように、と教皇様に内密で伝えられていました。教皇様が出逢った、とある聖女の話とともに。
だからこそ、セシリオ様の言葉は私を勇気付けてくれていたのです。能力の有無に関わらず、能力を使おうと使うまいと、治療院にいていいのだと。
僅かでも人の役に立てているのだと。