表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/42

5:安心できない状況で。




 聖女の力は、触れていると少しだけ効果を増します。それが素肌に近ければ近いほど、触れている面積が大きければ大きいほどです。


 あまりにも酷い傷なうえに、ここまで放置されている人を見るのは初めてで、どう対処していいものか悩みました。

 どのくらい経ったのかはわかりませんが、夕方になりつつあり、気温が下がり始めています。今は初夏とはいえ、夜はまだまだ冷えます。

 未だ意識を失っている騎士様ですが、息が少しずつ落ち着いて来たように思えました。

 動かすなら、今かもしれません。

 

「騎士様、少し痛むと思います。ごめんなさい」


 毛布にしっかりと騎士様を乗せ、頭側の毛布の両端を掴み、ズルズルと引っ張って家の中まで運びました。

 鍛えられた成人男性の身体は驚くほど重く、少しずつ引っ張っては休みを繰り返して、十分も掛かってしまいました。

 騎士様の傷が酷くなってしまったのではないかと思いましたが、騎士様は思ったよりも穏やかな寝息を立てていたのでホッとしました。


 家の中に入ったとて、安心は出来ません。

 血を流しすぎています。内臓にまでは達していないようなので、食事は取れるのだとは思いますが、意識がない内はどうしようもないといったところです。

 流石にベッドに持ち上げることは出来ないので、予備の毛布を出して、騎士様に掛けました。


「床でごめんなさいね」


 意識のない騎士様の頭を撫でながら、独り言ちていると、騎士様の口がわずかに動きました。


「どうしました!?」

「……ず………………み……ず」

「水ですね!」


 騎士様の頭を少しだけ抱え、コップから飲んでもらおうとしましたが、嚥下する力がないのか、口の横からダラダラと水が流れ落ちてしまいます。


「っ、失礼します――――」

「…………ん……んく……」

「ぷはっ」


 少し迷ったものの、自分の口に水を含み、騎士様の口を塞ぐようにして水を少しずつ流し込みました。騎士様の喉がコクリと僅かに動き、少しずつ嚥下していっているのが分かります。

 ゆっくりゆっくりとそれを繰り返し、コップ一杯分の水を飲ませると、苦しそうだった騎士様がほうっとした柔らかな表情になり「あまい」と呟きました。


 ――――普通の水ですが?


 もしかしたら、何かしらの癒しの効果が出たのかもしれませんね。自分でも自分の能力がいまいちわかっていませんので、なんとも言えませんが。


「もっと……」

「え……あ、はい」


 意識を取り戻しているようなのに、口移しする必要があるのかわかりませんが、騎士様が飲みたいと言うので、再び口移しで水を飲ませました。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◇◆◇ 書籍化情報 ◇◆◇


「お前を愛することはない」と言われたので「そうなの?私もよ」と言い返しておきました。 〜氷の貴公子様と紡ぐ溺愛結婚生活〜
書籍表紙


美麗すぎてヨダレものの表紙絵を描いてくださったのは、『シラノ』様っ!
脳内妄想だった氷たちが、こんなにも美しく再現されるとか、運使い果たしたかもしれない……

あ! この作品も、もりもりに加筆しています。(笛路比)
おデートとか諸々ね。ラブなストーリーを主に。コミックシーモア様は限定SSもあるよ☆
ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。

各種電子書籍サイトで販売されていますので、一例としてリンクボタンも置いておきます。


▷▶▷ コミックシーモア

▷▶▷ honto

▷▶▷ Amazon

▷▶▷ BOOK☆WALKER

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ