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40/42

40:恐れていること。

 



 セシリオ様が馬たちを小屋に連れて行く間に、洗濯途中だったものを回収し、一度お風呂場に置きました。

 キッチンで湯を沸かしてお茶を用意してダイニングテーブルに置きました。


「ありがとう。こうがいい」


 向かい合わせで置いていたのですが、セシリオ様がカップを横並びにし、イスも横並びに移動させました。


「オリビア、座って?」

「っ、はい……」


 手を取られ、イスに(いざな)われました。

 素直に座ると、セシリオ様もホッとしたように隣に座り、握っていた手をスッと口元に持っていきました。

 ちゆ、柔らかくゆっくりと薬指にキスを落とされました。


「愛してる」

「っ!」

「オリビアは信じてくれてないようだけど」

「だって…………」

「騎士だって、恋をする。国よりも国王よりも大切なものはある。それら全てを捨てても護りたい人がいる。それがオリビアだ」


 セシリオ様の言葉に、ボタボタと涙が落ち、嗚咽が漏れてしまいました。


「っ、う……でも、忠誠を……誓って…………ご家族は………………っ」

「四人とも、ずっと前から承知済みだよ。陛下も教皇もちゃんと説得した。それでも信じられない?」


 信じられないわけじゃない。ただ、真実を見抜く聖女がいる。彼女がいつかなにかしてくるかもしれない。それにまだ話せていないことがいっぱいある。

 もし、それを知られたら、嫌われてしまう…………そんな未来を受け入れるのが怖かった。


「オリビア、君はいつでも前向きで、いつでも笑顔だったよね? 何をそんなに恐れているんだい? 教えて?」

「置いて行かれるのも、置いて行くのも……嫌なんです」

「それは、君の真の力のこと?」

「…………聞いたのですか?」


 握られていた手を振り解いて距離を取ろうとしましたが、力強く抱き締められてしまいました。


「すまない、陛下と教皇から聞いたよ。できれば君から聞きたかったけど」

「っ、ごめんなさい……ごめんなさいっ」


 セシリオ様は責めてないから謝らないでと言われましたが、謝らずにはいられないのです。自分の矜持を守るために、どれだけセシリオ様を苦しめたか、側で見ていたから余計に。


 セシリオ様が抱き締める腕を緩め、顔を見合わせるようにされました。空色の瞳に縫い付けられたように視線が逸らせません。


「オリビア、絶対に力を使うな。何があっても、絶対にだ。私が死のうと、国王が死のうと、絶対に……君の命は君だけのものだ。誰にも分け与えないでくれ…………頼む」

「怒らないのですか? 持てる力をなぜ使わないんだと」


 不思議に思ってそう聞くと、セシリオ様のお顔がとても険しくなりました。怒りを抑えられないといった様子で、二の腕をぎちりと掴まれました。


「別件で怒っている!」

 

 ――――別件?

 



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◇◆◇ 書籍化情報 ◇◆◇


「お前を愛することはない」と言われたので「そうなの?私もよ」と言い返しておきました。 〜氷の貴公子様と紡ぐ溺愛結婚生活〜
書籍表紙


美麗すぎてヨダレものの表紙絵を描いてくださったのは、『シラノ』様っ!
脳内妄想だった氷たちが、こんなにも美しく再現されるとか、運使い果たしたかもしれない……

あ! この作品も、もりもりに加筆しています。(笛路比)
おデートとか諸々ね。ラブなストーリーを主に。コミックシーモア様は限定SSもあるよ☆
ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。

各種電子書籍サイトで販売されていますので、一例としてリンクボタンも置いておきます。


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