35:暫く。
窓から、太陽が昇り始めたのが見えます。
後ろにはすやすやと穏やかな寝息を立てるセシリオ様。目の前には乱れたセシリオ様のベッド。
朝起きたらいろいろ洗濯しないと……なんて考えて、顔から火が出そうな事態から目を逸らしています。
セシリオ様と体を繋げて思ったのは、心の底からこの人が愛しいということ。ずっと一緒に居たいということ。
いつか子どもも授かりたいなんて、夢みたいなことを考えては、脳裏にチラチラと現れる存在に落胆しつつ、寝返りを打ちました。
セシリオ様の凛々しいお顔が少しだけ柔らかくなっています。額に張り付いている髪の毛をそっと避けていると、空色の瞳と目が合いました。
「ん、おはよう」
「っ――――!」
あまりにも恥ずかしくて、セシリオ様の胸に顔を埋めると、頭上からクスクスと笑い声が聞こえて来ました。
「オリビア、その反応は更に煽っているだけだからな? 無理させたくなかったが――――」
煽りは、危険。心の底からそう学びました。
朝日が出始めた頃に目覚めたはずなのに、気付いたら、太陽が傾き始めています。
「お腹、減りました」
「ん。用意してくる。オリビアは寝てて」
朗らかな笑顔のセシリオ様が、私の頭をそっと撫でてキッチンへと向かって行きました。
セシリオ様も夜通し……あの、すごく激しく…………運動的なことをされていたのに……なぜああも足取りが軽いのでしょうか?
初めて身体を繋げてから、一週間。
二度目の睦み合いをしています。
初めての時よりも、更に濃く激しくて…………世界がぐるぐると回っているような感覚です。
「ハァハァ……オリビア、大丈夫?」
「っ、ん。ふぁい……らいじょうぶです」
額に浮き出た汗を腕で拭うセシリオ様はとても野性的で、心臓がきゅっと締め付けられます。
「っ! こら、そういうことをしない」
「へ!? ヒャッ!」
えっと、煽るというのは、いろんな種類があるのだと教え込まれました。
「オリビア、暫く王都に戻ってくるよ」
「え……」
なぜ、急に? 何をしに? 戻ってくるというのは? ここに帰ってきてくれるの? それらの言葉がたくさん脳内に浮かび上がるものの、口から出てきたのは、なんとも意気地のない言葉でした。
「っ…………はい、承知しました」