32:新たに購入するもの。
買い出しからの帰り道、セシリオ様が「そろそろ荷馬車を買わないか?」と言われました。
「馬車ですか?」
「ん。荷馬車のほうな。幌付きの」
台車はいつまでも借りるわけにもいかないから、と購入していて大活躍していたので、そこで満足していて思考が終了していました。
幌付きであれば雨風に見舞われたとしても、自分たちも荷物も守れますね。なによりも、沢山の荷物を運べるようになるし、徒歩では無くなります。
冬用に注文した薪を何回かに分けて運ぼうかと、なんとなく考えていましたが、荷馬車を購入すれば一度で済みます。
「ぜひ購入しましょう!」
荒廃の砂地はかなり緑化が進んでいます。所々は芝生のようになっていますし、鶏などの動物も生きていけるのではないでしょうか?
セシリオ様に、鶏なども購入してみないかとお話すると、賛成してくださいました。
「次の買い出しの時に手配しておくよ」
購入したいといっても、流石に馬は直ぐには手に入れられないそうです。大きめの都市に直接買いに行くか、手紙を出して近くの村まで持って来てもらうかなのだそう。
馬の種類などの希望を聞かれましたが、そこら辺は全くの無知です。セシリオ様にお任せしますと言うと、くすりと笑われてしまいました。
「大人しめの馬にするよう伝えておくよ」
「はい!」
鶏は三羽飼うことにしました。
産卵のペースから考えて、二羽にするか悩みましたが、卵に余裕があればお菓子なども作ったり出来るかなと話していたら、セシリオ様がぜひ三羽でと前のめりになられました。
「段々と充実してきましたね」
「そうだね。野菜も沢山出来ているし、半分は砂地じゃなくなっている。随分と暮らしやすくなったな」
いつか他の人も暮らせるようになって、段々と村のようになっていくと楽しいかもしれないなんて、ちょっとだけ考えました。
ただ、そうなるためには、真実を見抜く聖女との問題を解決させておかねばならなくなります。なんとなくですが、彼女は私の側にいる人にまで危害を加えそうですし。
セシリオ様はそれら諸々を覚悟しているし、何なら反撃する気でもいるらしいのですが。
普通の人はそうもいきませんから。
ただ、やっぱり率先して『ざまぁ』などはしたいとも思えません。セシリオ様と二人で静かに暮らしていければ、それで満足なんですよね。