31:聖じょ…………げふん。
「やっと来たか。待ってたんだぞ?」
「ジョンおじさん! ご無沙汰しておりました」
深々と礼をすると、そんなに畏まらなくていいと言われてしまいました。
「それよりも、ほら! このまえ王都に出かけてな! オリビアちゃんに似合いそうな服を仕入れていたんだよ」
「まぁ!」
この辺りの方々は、基本的に機能性重視なので、ブラウスとスカートやズボンといったセパレートタイプの服装です。ですが、王都の若い子たちはワンピースなどを着ていることが多いのです。
私の元々の持ち物もワンピースが多かったことと、着慣れているので、ワンピースを欲しがっていたことを覚えてくださっていたようです。
「ちょうど冬物があったから、村の奴らも欲しがるだろうと色々と仕入れてきたんだよ」
「まぁ! でも皆さん、機能面重視だと言われていましたけど……」
「あぁん? あいつら本当はオリビアちゃんみたいな格好をしてみたいって言ってたぜ?」
それなら、仕入れしてきて売れ残ってしまうとかはないかも? 私のせいでジョンおじさんが損をしてしまったのなら、大変申し訳なく思ったのですが……。
「んーなもん、気にしすぎだよ! 全く、聖じょ……んんっ、ゲホッ。オリビアちゃんは優しいなぁ」
いま完全に『聖女』と聞こえました。もしかしてジョンおじさんというか、この村にもバレバレだったのでしょうか…………。
ちょっとドギマギしつつ、冬用のニット製ワンピースを選びました。コート、マフラーや手袋などは、私とセシリオ様の両方の分を。
別のお店に移動して、薪などを買い求めつつ、冬の準備をどのくらいしておいたほうがいいか聞きました。
「そうだねぇ。今回ので一週間分よね?」
「はい」
「雪で道が閉ざされる場合もあるからねぇ。二ヵ月分くらいは貯めといたほうが良いと思うわよ」
「二ヵ月分ですか」
「あぁ、オリビアちゃんとこの近くには薪向きの木は生えて無いしねぇ。それに今からじゃ乾燥が間に合わないだろう?」
まだ冬前だからそんなに値上がりもしてないし、注文しておけば二週間くらいで用意できるとのことでした。
ちょっと大きな出費にはなりましたが、いざという時になくては本当に困るので、先払いで注文を済ませました。
そしてやっぱり、なんとなく住んでいる場所が荒廃の砂地だとバレているような気がします。というか、ほぼ確定風に話されていました。
だけどやっぱり、皆さん明言は避けてくださるので、私もそれに乗っかっておこうと思います。