30:生活費を……。
なんだかんだとセシリオ様と暮らし始めて二ヵ月が経ちました。
怪我がほぼ全快したこともあり、セシリオ様が村への買い出しに行ってくださるので、家の滞っていたり後回しにしたことが徐々に片付いて来ました。
「ただいま。ジョンにオリビアを連れてこいって怒られたよ」
「そういえば全然顔を出していませんでしたね」
徐々に寒くなってきましたし、冬の準備を始めたほうが良さそうです。次の買い出しは一緒に出掛けることにしました。
「あ、もうお昼ができますよ。片付けは後で一緒にしましょう」
「ん、手を洗ってくる」
そういえば、教皇様にもらった金銭は二人だと少し心許ないので、そろそろどこかで働くか、何かを作って売りに行ったりしてみようかなと考えていました。
食事中にその話を切り出したら、セシリオ様が金貨が入った革袋をドシャッとテーブルに置いて「二人で生きるには十分だと思うけど?」と首を傾げました。
どう見ても数人いても百年は余裕で生きられるほどの金貨。なぜこんなに持っているのかと、何かしらの犯罪を疑いそうになりましたが、セシリオ様の全財産だと言われました。しかも最初に出逢った時の荷物の中に入っていたとのこと。
そういえば、怪我に慌てすぎて荷物の存在に気づかず、数日ほど井戸の側に放置してしまっていました。
盗まれなくて良かったです。
「王都で暮らすなら直ぐ無くなるだろうが、ここでの生活なら余裕だと思うよ」
王都なら直ぐ無くなる、という言葉に白目になりそうでした。騎士様は貴族。貴族の方のお金の使い方はちょっと理解できそうにありません。
「夜会に出るために服を仕立てたり、ドレスや宝石を贈ったり、食事に出かけたりといろいろあるからね」
「なるほど。確かに、そういったところへの出費もありますよね」
セシリオ様曰く、ほとんどの貴族は人付き合いやコネづくりのためにお金を使うのだとか。
私腹を肥やし贅沢三昧なのはほんの一部だそうです。その最たるものが、真実を見抜く聖女の家なのだと言われました。
「まぁ、もう関わることもないだろうから、そこら辺は気にしなくて良いよ」
そう言って、セシリオ様がご飯を美味しそうに食べていたのですが、少し気になることはありました。でも、私生活や家族のことに踏み込んでいいのか分からなくて、結局聞けずじまいになりました。