29:これは仕方ない。
オリビアの頭を撫でつつどうしようかと考えていると、なんというか……猫のように? 手に顔を擦り寄せて来た。
「っ……!」
なすがままにしていたら、袖口をきゅっと摑まれてしまい、動けない状況に。
これは仕方ないなと、オリビアを起こさないようにしてベッドに潜り込んだ。
人の体温は暖かい。それは、オリビアが添い寝してくれていたから、痛いほど理解している。だが、怪我うんぬんよりも、好きな女性が自分のことを何も意識していないのだと痛感させられるのが辛かった。
ちらりとはだけた胸元、親密な間柄でしか見れるはずのない素脚。それがぴったりと吸い付くように触れていれば、気持ちが高ぶりそうになる。
勘違いしてはいけないのに。
だが今は――――。
「好きだよ」
オリビアからも同じ気持ちが伝わってくるから、ついぼろぼろと漏らしてしまう。お互いに慌てて変な空気にしてしまい、反省しているが……もう少しだけ距離を縮めたいというか、前に進めたい気持ちが勝ってしまう。
ベッドに入った瞬間にオリビアは目覚めたらしいが、寝た振りをしているから、わざと耳元で愛を囁く。
掴まれていた袖口は既に解放されているが、気付かなかったことにした。
「愛してる」
腰に腕を回しきゅっと抱き寄せて、目を瞑った。
「おやすみ、オリビア」
◇◇◇◇◇
人の気配に目が覚めたら、セシリオ様が覆いかぶさるようにしてベッドに入り込んでくる瞬間でした。
何が起こっているのか分からず、ギュッと目を瞑っていたら、隣に寝そべられました。
ボソリと聞こえたのは「好きだよ」という言葉。
――――へ?
「愛してる。おやすみ、オリビア」
ぐいっと腰を抱き寄せられて、セシリオ様の胸に張り付くような格好に。
ちゅ、と額にキスをされて、全身から熱が溢れ出て発火するのでは? というほどに熱くなりました。
セシリオ様からは直ぐに寝息が聞こえてきたので、抜け出そうと思ったのですが、腰がガッチリぎっちりと抱き込まれていて逃げ出せそうにないです。
まだ少し眠いですし、これはもう諦めるしかないのかも? 眠れるか不安になりつつも目蓋を閉じて、ドクンドクンと聞こえてくるセシリオ様の心音に耳を澄ませました。