28:可愛い菜園。
朝食を終え、お皿洗いもセシリオ様がしてくださるとのことで、お任せしました。
お腹いっぱいになって強い眠気に襲われたので、正直ありがたかったです。
「ゆっくりおやすみ」
「はい。よろしくお願いいたします」
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あふあふと欠伸をしながら寝室に向かうオリビアを見送り、皿洗いを開始。
昨晩はやりすぎたなと反省した。お互いに変に意識して眠れずじまいだ。実は私も眠れずにいたのだが、バレてはいないようでホッとした。
皿洗いを終わらせて裏庭に向かうと、小さな菜園があった。思ったよりもしっかりと作られてはいるが、植え付けの間隔が狭いのと、何個か間違って本物の芽を引っこ抜いて、雑草を育てていた。
「ブフッ! 可愛いな……」
小さな木の板に『ニンジン』という文字と人参の絵が描いてあった。
可哀想なことに、人参の半分近くが雑草だった。
人参は植え付けの間隔が特に狭かったので、雑草を引っこ抜き、植え替えをして間隔を広げた。
大切に育てていた雑草は、大きくなると他の植物の育ちを阻害してしまうほど生命力の強いものだったので、可哀想だが焼却処分だ。
「他は…………ん? カボチャか?」
蔓が縦横無尽に走っているし、絡んでいる。
「整枝してないのか」
親蔓と子蔓一本を残し他は除去。
ある程度作り方は聞いていたのだろう、畝はちゃんと作れていた。
しかし、最近植えたと言っていたが、育ちが異様に早い。そもそも、『荒廃の砂地』なのに、土がある。
数日前まで怪我のせいもあり頭がぼーっとしていたが、よくよく考えればおかしな話だ。
この家を中心として、緑と土が広がっているように見える。井戸も枯れていたはずなのに、透き通った水がなみなみと貯まっているのだ。
――――なぜ?
考えれば考えるほどに、オリビアの能力が関係している気がする。王都を出る前、教皇から言われたのは、『オリビアの隠し持った力を受け入れる覚悟はあるのか?』だった。
真実を見抜く聖女が敵視しているオリビアの能力は、本当に凄いのだろう。
真実を見抜く聖女は、本物の聖女ではある。
ただ、あの女は真実を見抜いて、好き勝手に使っている。それは誰もが分かっている。
人はそんなに馬鹿ではないし、愚かでもない。
教皇は言う。能力を過信し使いまくれば枯れる、と。真実を見抜く聖女は聖女教育を受けていないから、それを知らないらしい。
なぜあの女に能力が開花したのかはわからないが、稀にそういう者もいるのだとか。
皆が、あの女の力が枯れるタイミングを待っている。
あの女が見る事ができるのは、目の前にいる人間のみかつ、事象を指定しないと見えない、というのは判明しているから、扱いやすくはあるのだろう。
菜園の整地を終わらせて、屋内に戻った。
体を動かしたおかげか、少し眠くなってきたので、私も休んでしまおうかと寝室に入ると、オリビアがなぜか私のベッドに倒れ込むようにして眠っていた。