27:やっておきたいこと?
あふあふとあくびをしながら朝食を作り、テーブルに運びました。
「私のせいだよな? 自信過剰でなければ」
ちょっといじけていたのがバレてしまったようで、セシリオ様が申し訳無さそうに、顔を覗き込んで来ました。
「…………はい」
「ん。食べたら寝ておいで。何かやっておきたいことは? 済ませておくから」
「っ……怪我人にさせられません」
「いやだ」
――――いやだ!?
この前から、セシリオ様は直ぐに嫌だと言います。なんとなく子供っぽいというか、可愛いわがままを言われているようで『嫌ならしかたないかー』という気分になってしまいます。
そもそもなのですが、お皿洗いや洗濯くらいしかやることはないのですよね。買い出しは昨日済ませましたし、今のところ不足品もありません。お任せできるようなものは…………あ。
「えと、菜園に水やりをお願いしたいです」
「ん! 他には?」
前のめりになりつつ、にこにことして聞いてこられます。本当にそれくらいしかなく悩んでいると、セシリオ様が菜園の拡張を提案してこられました。
「二人いるんだ、もう少し広げていろんな野菜を植えてみないか? 家の前に花壇を作るのもいいかもな?」
なるほど、花壇ですか。
私にはなかった細やかな感覚の提案にちょっと驚きです。色々と説明してくださっているセシリオ様を、トーストをモグモグと食べながら見つめていると、何か気になることがあるのかと聞かれました。
「セシリオ様は騎士様なのに、なぜ土いじりなどの知識があるのですか?」
畑の肥料や腐葉土などはどこかに保管しているのかとか、菜園に植えているものは何かとか聞かれて、私はちょっとドギマギしていたのです。
肥料はもらったものをざざっと土に混ぜただけですし、腐葉土って聞いたことあるけど、何の役に立つのかなぁ? と思ったので。
「あぁ、本当の両親は農家なんだよ」
「え!?」
「ん? 知らなかったのか?」
騎士様は貴族のご子息で構成されています。まれに有能な子どもを養子にし騎士にする家もあるようですが。
「ものごころ付く前から養子に出されていたが、義父母が両親との絆はあったほうがいいというタイプでな」
普通の貴族の子息と全く同じように育てられはしたものの、疲れたら本当の両親のもとに泊まりに行って羽根を伸ばすよう言われていたそうです。
そこで、お父様から畑仕事を学んだのだとか。お母様は花壇の手入れをよくしていたらしく、そちらでも色々と教えてもらったのだそうです。
「素敵なご家族ですね」
「ああ」
セシリオ様は本当にご家族を愛されているようで、ふわりとした微笑みがとても眩しく思えました。