24:ドキドキとワクワクと、連れ去られ。
セシリオ様の服を三着と、下着類を一週間分選びました。とりあえずはこれくらいで良いとのことです。
服はもうちょっとあったほうが良くないかと聞きましたが、洗い替えさえあればいいとのことで、セシリオ様は服にこだわりがないのかもしれません。
似合いそうなものを買って、こっそりと増やしていこうかな、なんて勝手に未来の計画を立てていました。
「次は?」
「あっ、はい……次は食材を」
「ん」
おじさんから受け取った荷物を、セシリオ様がサッと持ってくださいました。そして、右手を差し出してこられます。
なんだか当たり前のように手を繋いでしまっていますが、村の人たちに変な目で見られてしまわないか心配です。
だって、ただの昔馴染みで顔見知りだと言い訳してるのに。
「この村はけっこういろんな店があるんだな?」
「ええ、本屋さんもあるんですよ」
「本は好き? 後で寄る?」
「はい!」
あそこでは日常的には人と関われませんから、本を読んだりして過ごすことが増えています。なので、ここで本が手に入ると分かったとき、本当に嬉しかったのです。
本は、様々な世界に連れて行ってくれますから。読んでいる間だけは、現実から少しだけ離れられますから。
二人での買い物はドキドキとワクワクとが入り混じっていて、とても楽しかったです。
どのお店でも、セシリオ様が店主さんに奥に連れ去られるという謎のくだりはありましたが、どのお店でもなぜかにこやか風に戻ってきました。
何をしていたかと聞いても、苦笑いされるだけでした。
寝具店で折り畳めるマットレスを買い、台車を借りて『荒廃の砂地』へと戻りました。
道が険しい場所が少ないこともあり、少し買いすぎたかもしれないです。
ほとんどの間、セシリオ様が台車を押して下さっていましたが、ちょっとお疲れの様子でした。
「いや、体力じゃなくメンタル――――なんでもない」
「精神的疲労……? 偽装のせいとかではないですよね?」
「…………ん、それそれ、偽装のせい」
ものすごく適当にかわされてしまいました。
買ってきたものを片付けつつ、何度か理由を聞こうとしましたが、スルスルぬるぬると躱されてしまいます。
言いたくないのなら聞かないようにはしたいのですが、セシリオ様は苦笑いするばかりなので、なんとなくモヤッとしてしまいます。
なので、意地でも聞き出したいです。