22:買い出しに行こう。
特に休憩することもなく、セシリオ様はベッドを家まで引きずって運び終えました。
「ふう。流石にきつかった」
そう言いますが、汗などかいていませんし、息もあがっていません。
騎士様の基礎体力はどうなっているのでしょうか?
寝室にベッドを二台も置くと、少し狭くはあるものの、ちゃんと通路は確保できましたし、どうやら元々が二人暮らし用の家だったようです。
ふと、セシリオ様は隣の家に住めばいいのでは? と思ったのですが、そこは断固拒否されました。
「ここは水道も通っていないし、買い出しに行くには少し時間が掛かる。それぞれでオイルや薪を使うのはもったいないだろう? 二人で生活したほうが、消費量は少なくなる」
「確、かに……?」
「だろう?」
急に饒舌になられたこともあって、ちょっとびっくりしていたら、その間に同居は決定事項のような空気が流れていました。
セシリオ様がニコニコとしていて、とても楽しそうです。
頭から反対を続けるよりも、一緒になって楽しんだほうが、お互いに気持ちよく生活できるのではないか? と思い、気にしないことにしました。
なぜかガッツポーズをしているセシリオ様。ちょっと可愛いです。
そろそろ保存食も少なくなってきたので、お昼を済ませてから近くの村まで買い出しに行くことにしました。
セシリオ様には留守番を頼もうとしていたのですが、絶対について来るのだと言って聞きません。
「そんな細身で、私の布団まで買ってくるなどと無茶なことを言うからだ。そもそも今まではどうしていたんだ?」
「台車を貸していただいていましたよ? つぎに来るときに返せばいい、と」
「完全に旅人の扱いをされていないじゃないか」
「あ……確かに?」
言われて思いました。
村の方々はなんというか、普通に買い出しに来た人の扱いをしてくれていましたね……。
ランプオイルは足りてるのか、菜園を作るならあれがいい、これがいい、お古だけどもう使わないからこれを持っていけ、などなど。
「完全に親戚の子ども扱いされてるっ!」
「皆さんフレンドリーなんですよね」
「…………よく無事に過ごせているな」
「ここらへんは治安がいいようですから」
「いや、普通に盗賊いるぞ?」
――――あ。
そういえば、セシリオ様も襲われて怪我したんでしたね。
「…………なんだか、警戒しているのが馬鹿らしくなってきたな」
クスクスと笑いながら、セシリオ様が私の左手をスッと握り、歩き出されました。早く行かないと、戻る頃には暗くなってしまうと言いながら。