17:トイレの、あれ。
夕食を終え、お風呂の準備を始めました。
今日はもう遅いのでお風呂は諦めます。頭は洗うものの、身体はお湯とタオルで拭うのみにしておいて、明日は湯船に水を溜めて沸かそうと決めました。
「セシリオさ――――なにを!?」
桶にお湯をたっぷりと入れ、髪と身体を拭う用のタオルも用意しました。
セシリオ様の下へ向かおうとしていると、寝室のドアをセシリオ様が開き、バチリと目が合いました。セシリオ様の手には、ベッドの足元に置いていたはずの蓋付きのトイレ桶。
――――どこかに移動しようとしている?
「あっ……これは…………その…………流そうと………………」
「あ、ここに水洗トイレはないですよ。廃棄所に持っていきますね」
トイレ桶を下さいと言いつつ手を差し出すと、サッと後ろに隠されてしまいました。
「セシリオ様?」
「貴女にそんなことをさせるわけにはいかない……」
そんなことと言われても、治療院では歩けない人の下のお世話は私がしていました。慣れているので気にしないで欲しいのですが。
そんなことよりも、歩いて傷が開いたらどうする気なのでしょうか? そっちのほうが、私的には嫌なことです。
どのみちトイレに置いていたものも処分しに行きたいですし、一度で済ませてきますとお伝えすると、渋々といった感じでやっとトイレ桶を渡してくださいました。
「なんなんだこの羞恥プレイは……」
「慣れではないですかね?」
「ぬぐぅぅぅぅ」
セシリオ様がよたよたと歩きながら寝室に戻り、ベッドにドサリと倒れ込んみました。
「ほら、無理して動くから。行ってきますね。大人しく寝てて下さいよ?」
「…………はい」
ちょっとキツく言い過ぎたでしょうか? なんだかしょんぼりとされています。
排泄物の廃棄が終わり、戻ってしっかりと手洗い。
少しお湯を沸かし直して寝室に戻ると、セシリオ様が頭まで掛布を被っていました。
――――寝てる?
「セシリオ様、清拭しますよ」
頭であろう場所をペチペチと叩き、掛布を引っ張ろうとしましたが、ガシッと掴まれて拒否されました。
「ちょっと!?」
「っ………………次から、私が捨てに行くからな!」
「え? 何をです?」
「と……トイレの…………あれ……君の分もっ!」
「あぁ、はいはい。距離が歩けるようになったらお願いしますね」
「…………クッ……相手にされてない…………」
いや、普通に相手していましたし、会話していましたし、返事しましたよね?
「耳、聞こえてます?」
「聞こえてるよ……そういうことじゃないんだ」
じゃあどういうことなんだと聞き返しましたが、セシリオ様はモゴモゴとして答えてくださいませんでした。