16:攻撃力が高い。
ベッドで横になっているセシリオ様がフッと笑い声を漏らされました。
「新たな君がたくさん見れてうれしい」
「っ! お……お腹減りましたねっ、夕食にしましょうか!?」
「ふふっ。そうだね」
パタパタと走って寝室を出る間際、後ろから「ありがとう、オリビア」と、とても柔らかな声が聞こえました。
心臓が握りしめられたようにギリリと痛くなりました。嬉しくて、悲しくて悔しい。
申し訳ない気持ちが大きくて、この気持ちは聖女の力がある限り一生持ち続けるもので、一生付き合っていかなければならないもの。
ふと、教皇様の言葉を思い出しました。
『いつか誰かと人生を分かち合うとき、後悔しないようにしなさい』
その言葉を聞いたのは、教皇様の悲しい過去を教えていただいたとき。教皇様は『後悔』をどういう意味で使われたのでしょうか?
あの頃はバレてしまわないようにという意味だと思っていたのですが、今は……少しだけ違う意味にも思えてきています。
トレーに野菜スープ、パン、ベーコンと卵の炒め物を乗せて運びました。今度は自分の分も一緒に。
「私も一緒に食べますから……セシリオ様、自分で食べて下さいね?」
「ふむ……なるほど」
何がどうなるほどなのでしょうか。
セシリオ様がクスクスと笑いながら起き上がって、ベッドから足を下ろして座ると、トレーを自身の横に置かれました。
私の分はサイドボードに置いて食べるよう言われました。こういう何気ないスムーズな気遣いは、本当に心優しい騎士様なのですよね。
「いただくよ」
「はい、どうぞ」
お昼よりもかなり元気になられたような気がします。食事もしっかりと喉を通っているようです。
「熱はまだあるようですが、大丈夫ですか?」
「ん? ん! 美味しい!」
いえ、それは聞いてませんが、ありがとうございますですが、熱は!?
「聞いてます?」
「ずいぶん下がったよ。オリビアの能力は本当に凄い。なぜ評議会は理解しないんだろうな? まぁ、オリビアの良さを知っているのが私だけだというのも、美味しいところではあるが」
もぐもぐとパンを食べながら、首を傾げて不思議そうにしているセシリオ様。どうして要所要所でそうも甘言を零すのでしょうか。
攻撃力が高すぎて心臓が持ちません。