11:ちょっと可愛い。
洗濯物を干して、キッチンへ戻りスープを温め直しました。熱があるようなので、パン粥は冷めた状態が良さそうです。
それぞれをトレーに乗せて、ベッド上に座っていたセシリオ様の横に置きました。
「おまたせしました。食べれますか?」
「食べさせて」
「へ?」
食欲的な方の意味で聞いたのですが、まさかの『あーん』で待機されてしまいました。
手が上がらないほどきついのでしょうか? 腕を動かすと、傷が痛む? それなら、あーんをしたほうが良さそうです。
スプーンに野菜をしっかりと掬い、セシリオ様の口元に運んだ。
「あーん」
「んっ……おいしい」
「よかった。もっと食べれます?」
「うん。あーん」
カパリと口を開けたセシリオ様。なんとなく餌を求める雛鳥みたいです。
もぐもぐと食べながら何度も美味しいと言ってくれるので、とても嬉しくて、セシリオ様の口に何度も野菜スープを運びました。
「あっ」
あーんを少し失敗してしまい、セシリオ様の口の端からスープがたらりと溢れてしまいました。
拭わねばと思って、ポケットからハンカチを取り出そうとしていたら、セシリオ様が親指で拭い、指先をぺろりと舐めました。
「っ! 手、動くんですか!?」
「ん? うん。動くけど、どうかした?」
どうかした? ではありません。てっきり傷に響くのだとばかり。
それなら、なんであーんしなきゃなんですか!? 意味が分からないです。
「自分で食べれるのなら、自分で食べてくださいっ!」
「……え? あーんは?」
「しませんっ!」
衝撃を受けたような顔で、セシリオ様が固まってしまいました。
どうしたのかと思い顔を覗き込みましたが、固まったままです。
「セシリオ様?」
「…………もしや、私は好かれていなかった?」
――――今更!?
なぜ今更そんな思考になっているのでしょうか。というかそもそも、『あーん』をするかしないかで、好意の有無の確認が行われるものなのでしょうか?
好きではありますが、それとこれとは違うといいますか、自分で食べたほうが早いし、口に運ぶペースも気にならないでしょうに。
「それは関係のない問題です。自分で食べてください」
「…………はい」
渋々といった感じで返事をされました。ちょっと唇が尖っています。
なんですかその顔は。ちょっと可愛いじゃないですか。