1:ざまぁされました。
聖女なのに、『ざまぁ』されました――――。
幼い頃から女神教会で真面目に働き、なにが女神様に認められたのかは分かりませんが、聖女の力が顕現しました。それからはや十年。
最近入ってきたばかりの聖女によって、私は偽者だと言われました。
聖女の力は様々で、私は側にいる人を徐々に元気にするという癒しの能力。
現段階で聖女は六名。それぞれが違う能力で、祈った相手の戦闘力を一時的に高める能力や、冷気を発する能力など、言ってしまえば『ちょっと便利』くらいのものが多いのです。
ところが、新たに顕現した聖女は、真実を見抜く能力でした。
普通は、教会で見習いを数年ほど献身的に続けていると目覚めるものなのですが、彼女は伯爵家の深窓のご令嬢で見習いの期間などもありませんでした。ある朝、自宅のベッドで目覚めたときに顕現したのだとか。
彼女は、貴族という立場はもちろんのこと、歴代の聖女の中で能力の有益さが飛び抜けていたこともあり、『真の聖女』とすぐに崇め奉られるようになりました。
「真実を見抜く『真の聖女』が言うのであれば、信じるしかあるまい。そのほうの今までの働きに免じて、王都追放とする。また、これよりのちに聖女の名を騙り何か騒動を起こした場合は、死刑とする」
「……承知しました」
国王陛下がそう決定を下したのであれば仕方ないかと思い、教会で荷物をまとめて旅に出る準備をしました。
ありがたいことに、女神教会では全てを自分でこなせるようにというか、花嫁修業のようなことも行われているので、ある程度のことは自分で出来ます。
教皇様が何かの間違いのはずだと言いますが、真実を見抜く聖女が言うことに表立って反論もできないようでした。
他の聖女や聖女見習いたちとは、昨夜の内にこっそりとお別れを済ませましたので、もういいのです。
「オリビア」
「教皇様、長い間お世話になりました」
「せめて…………」
教会の入口で別れの挨拶をしていると、教皇様がこっそりと渡してくださったのはお金の入った革袋でした。たぶん慎ましく生きれば数年は持つであろう量。
もう一度感謝を述べて、歩き始めました。
ざまぁされ、追い出されたのは正直悲しいですが、実はワクワクもしているのです。
ずっとずっとずーっと、教会で過ごしていたので、外の世界は久しぶりなのです。
――――さて、どこに行こうかしら?