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かつて回っていた寿司たちへ

作者: 猫舌

お腹がすいてます。

自分にご褒美を。

飯テロ万歳。

 今日は久々の仕事休み。

 お昼から、ささやかな自分へのご褒美を頂こう。

 美味しいお寿司を好きなものだけ食べたいな。


 店内に入り、受付のモニターに人数と席指定を入力する。


 『独り暮らしの楽しみは』

 『好きな時刻に好きなだけ』

 『好きな食べ物いただける』


 ランチタイムの人混みを避ける、店の口開けの10時半。


 カウンターの左端角席に座る前に、受付の店員さんに声をかける。


 「持ち帰り用の甘だれ1本ください。店内で使います。」


 自分はどんなネタにも基本的に甘だれ派だ。

 魚の脂のコクにも、納豆などのさっぱり系にも、確かな存在感をオールウェイズ加えてくれる。


 ネットで可笑しな映像を見てから、甘だれを自分で用意するようになってしまった。


 変なことをする人間は世の中多くないと思うが、恐怖感が無くせない。


 「口をつけてないから迷惑はかけていない。」と言って、醤油指しをなめて警察沙汰になった人を、真似をする人間がいることが信じられない。


 お客さんに嫌悪感を与えることは、店に迷惑をかける行為だと分からないのか。


 気を取り直して、寿司に集中。


 自由に寿司の回らなくなってしまったレーンが悲しい。


 好みのネタが近づいてくる緊張、他のお客に取られないようにというささやかな祈り。


 やっと目の前に待望の寿司がたどり着いた時の高揚感。


 自分の認識外のネタが回って来たときの驚きと期待感。


 全部、なくなってしまった。


 かつて回っていた寿司たちに想いを馳せつつ、モニターで注文する。


 まず、貝。

 つぶ貝、大ぶりで鮮度よし。

 こりこり、ぷつっ、で旨味よし。


 魚は青魚から。

 鯵、味の基本。

 鮮度よし、旨味よし、DHAよし。

 身体によい感じがする。


 で、貝が好きなので。

 ホタテの蒸したやつ。

 噛んだら旨味の汁がじゅわー。


 更に魚。

 鰤、外せない。

 甘だれを弾く脂ののり。

 美味しくない訳がない。

 厚みのあるネタにかぶりつく。

 じゃくり、幸せ。


 食感を変えたくて、穴子。

 ほこほこの食感。

 ねっとりした甘味とコク。

 

 次に、イカ。

 しっとり、ねっとり。

 独特な甘い風味がよし。


 ここで納豆軍艦。

 さっぱり口をリセット。

 自分の好みは納豆山芋とろろのハーフ&ハーフ。

 自宅では難しい美味しさ。

 甘だれがよく合うのよ。


 あまりの寿司の美味しさに口調が変わってしまったわ。


 でも、良いの。

 気楽な一人飯、迷惑行為はしていないからね。


 で、食欲が沸いてきて後半戦。


 びんちょうまぐろを二皿からね。

 ねっとりした身の感じが好き。

 たっぷり4貫をゆっくり味わう。


 次に、鯛。

 ちょっと高級品だけど今日は頑張ったご褒美だからね。

 真っ白な身がとても綺麗ね。

 ぷりっとした弾力と味わい深い旨味が良いの。


 で更に貝。

 白とり貝、いただきます。

 このお店の白とり貝、大きいの。

 弾力が歯を弾くみたい。

 貝は旨味が色々特徴があってどれも美味しいの。


 ここからは纏めに入るわ。


 まぐろ、赤身は外せない。

 寿司の基本。

 ねっとり食感、強い旨味、幸せ。


 更に追加の鰤。

 いつも美味しい鰤だけど、今日は特に私の身体が脂の旨味を求めているのよ。

 脂は身体の癒し。


 で、追加のつぶ貝。

 好きなものを好きなように好きな時に好きなだけ。 

こりこりの再来。


 もう人生の後半戦に突入してるから、昔のように30皿は無理ね。

 

 あの頃はお金はあんまりなかったから、本当にお寿司は贅沢品だった。

 

 昔からお寿司は美味しかった。

 若かった私のお腹もイキイキしてたわ。

 お寿司のお皿は元気よく回っていたし、店員さんも活気が今よりあったと思う。


 お寿司が好きな気持ちは、若い頃から衰えていないのよ。


 色々変わってしまったわね。


 たぶん今後お寿司が自由に回ることはないでしょう。


 でもね。


 お店への信頼は揺るがないし、やっぱりお寿司は美味しいの。


 最後は厚焼き卵で締めるわ。

 優しい甘さと身体に染み渡る栄養素をじっくり感じるの。


 たっぷり入れて冷ましておいた濃いめで温めのお茶が素敵。


 自分で好みに仕上げられる嬉しさをかみしめるの。


 ありがとう、感謝しかないわ。


 持ち帰りにはいなり寿司とネギトロ巻きの折り詰めを。


 炙ったいなり寿司は油揚げがぱりっと香ばしくて美味しいの。

 しかも6つのうち2つはつぶ餡いりのデザートいなり寿司。


 ネギトロ巻きも炙ったやつで海苔の香ばしさが増した上に、脂の旨味ががっつりなのよ。

 おやつの時間が待ち遠しい。


 店員さんに支払いを済ませて、また殺伐とした世界を生きていく。


 ありがとう、寿司。

 私の心の支え。


いなり寿司の中身は、ゴマ酢飯とおはぎが好みです。

ネギトロ巻きは贅沢品。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読みながらお寿司が食べたくなりました……素晴らしい描写。 回転寿司、私はさび抜き派だったのであまり回っているものを取ることはなかったのですが(最近は回ってるお寿司さび抜きでしたけどね)、回転…
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