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元が付いてしまった辺境伯家令嬢を助けてくれたのは野蛮人な公子様でした。  作者: ルーシャオ


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第十一話 命は大事にしてね

 ペネロペは胸を張って、私の頼みを引き受けてくれました。


「任せて、お茶会のセッティングをしておくわ! あの女、私を籠絡しようと何度もちょっかいを出してきたから、コネクションだけは残ってるの。あと、私の味方の令嬢をサポート役に二人呼んでおくわ。お義姉様はぎゃふんと言わせる大演説を作っておいて!」


 滑らかにペネロペの口からは計画が溢れ、形作られていきます。頭の回転が早いとはこういうことを言うのでしょう、頼りになります。


 しかし、少し認識の違いがありますので、訂正しておかなくてはなりません。私は手を挙げて、こう言いました。


「あの、ペネロペさん。ぎゃふんとは言わせませんよ」

「じゃあどうするの?」

「きちんと挨拶をするだけです。私はヴィンチェンツォ様の婚約者になります、と」


 私としては、それ以上何かができるわけではありません。ただ、名実ともに私がヴィンチェンツォの婚約者となり、レーリチ公爵以下家族にも認められているのなら、そこにスカヴィーノ侯爵家令嬢アナトリアが口を挟む余地はないでしょう。その状況を作り、証人を得て、広く知らしめる。


 これ以上のことは、私にはできません。


 口下手で、すぐに緊張して、貴族令嬢として最低限の礼儀作法しか知らない私は、まともにスカヴィーノ侯爵家令嬢アナトリアと口論をして勝てるわけがないのです。謀略だって無理です。だからこそ、なのですが——ペネロペは呆れたように、怖いことを口にします。


「殺されるわよ?」

「へ!? そ、そこまでですか……!?」

「うん。お茶会の席にあるフォークで刺されると思うわ」


 私はその様子を想像してしまいました。お茶会で激昂したスカヴィーノ侯爵家令嬢アナトリアが、フォークを手に私へ迫ってきて、フォークの先端がお腹や胸に。想像だけでも痛くて嫌ですが、しかしチャンスでもあります。


「でも、それでもいいかもしれません。私が刺されることで、ヴィンチェンツォ様が彼女と縁を切る理由となるなら!」


 正直、とても怖いですが、ヴィンチェンツォの婚約者に怪我を負わせたとなれば、スカヴィーノ侯爵家令嬢アナトリアのメンツは丸潰れかと思われます。怖いですが。


 ペネロペは水を一口飲んで、パストラミの塩胡椒の辛さを流していました。少し何かを考えて、それから腕を組み、仕方ないとばかりに頷いてくれました。


「はあ。しょうがないけど、お義姉様、ちゃんと命は大事にしてね」

「えっ、そこまでですか」

「スカヴィーノ侯爵家令嬢アナトリア、あの女はね、貴族の女の悪癖を煮詰めたような女よ。強欲、傲慢、残酷、そんな言葉が宝石よりも似合うわ! だから婚約者がいないのよ、言い寄ってくる男をほとんど破滅させてきたから」


 随分な言われようです、アナトリア。そんなにですか、ちょっと私には想像がつきません。


 直接会ったことのあるであろうペネロペは、アナトリアのことを思い出して憤慨しています。


「あの女は、どうやっても手に入らないエンツォお兄様が欲しくてたまらないの。ただそれだけ。お兄様を愛しているわけじゃないの。欲しいから言い寄っている、手に入れればもう用済み。そんな薄汚い考えなんて、とっくにお見通しよ!」


 私は何も言えず、ただ黙って聞いていました。いえ、ペネロペの肩を持ったり、アナトリアを擁護したりするつもりはありません。実際のところを知らない私は、ペネロペの忠告で最大限警戒はしますが、なるべくプレーンな状態でアナトリアに会いたかったのです。


 火に油を注がないよう、ペネロペの言葉が途切れるまで相槌を打ちながら待ちます。私が新しいクロワッサンサンドを作って、水を飲んで、バジルチキンパテを発見したころ、ペネロペはこう締めくくりました。


「とにかく任せて、お義姉様。私はお義姉様のために、全力で後押しをするわ! あ、ついでにエンツォお兄様のためにも。ふふーん、レーリチ公爵家の末娘を舐めないでもらえるかしら!」


 ペネロペは得意げにそう言って、クロワッサンチーズサンドを頬張ります。


 うーん、私としましては、そうであればなお一層、穏便に済ませたいのが本心です。嫌いだからとやり合っていては、いつまでも争いは終わらず、最終的にはどちらかが滅びるかしかなくなってしまいます。


 であれば、私の言葉が未来を左右するでしょう。


 大したことを言えるわけではありませんが、しっかりと考えなければ。


 神妙な気分の私へ、ペネロペはサラッとこんなことを口にします。


「というわけで、明日お茶会の席を設けるから、行ってらっしゃい!」

「早いですね!?」


 どうやら、私に許された猶予は、一日だけです。


 口にくわえているクロワッサンの味に幸せを感じる悠長な時間はなさそうでした。

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