アラサー令嬢は嫁がない
『聖女さんは追放されたい!~王家を支えていた宮廷聖女、代わりが出来たとクビにされるが、なぜか王家で病が蔓延!えっ、今更戻って来い?一般の大勢の方々の病を治すのが先決なので無理です』
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「ルナ公爵令嬢、君との婚約は破棄させてもらう! 僕は真実の愛に目覚めたのだ」
そう言って、第一王子ケイン殿下は、桃色の可愛らしい少女を抱き寄せた。
「ど、どうだ! 嫉妬したか!?」
ケイン殿下はなぜか、焦った様子で私に言ってくる。
でも私はこう言った。
「何をおっしゃいますか! 私のような20を過ぎた行き遅れよりも、その可愛らしい少女を大事にしてくださいませ」
そう言ってニコリと微笑んだのである。
私ことルナは小さい頃に唐突に前世の記憶を思い出した。
どうやら前世ではとある国の主婦をやっていたようだった。
それがなぜか公爵家の令嬢として生まれ変わっていたのである。
ただ、私には前世で浮気性な夫がいて、離婚していた。子供も二人育てたが、夫は全く育児にかかわってくれなかった。
正直、もう結婚など懲りごりといった気がしていた。
なので、公爵令嬢として第一王子との婚約が決まった時は、勘弁してください! と思わず前世のキャラで叫んでしまったほどだ。
というわけで、それ以来、第一王子を遠ざけるために四苦八苦してきたのが、私のこの半生なわけである。
第一王子というご身分なわけだから、私が主婦としての素の態度を示せば、絶対に嫌悪感を持つと確信して、色々なことをした。
例えば、部屋の掃除をすみずみまで自分でやった。ドレス姿ではとてもできないので、メイドが着るような作業着で、だ。わざと王子が訪ねてくるタイミングでそれをやってみた。王子は目を丸くしていたから、成功だろう。
また、まずい料理を作って差し上げた。やはり料理は女性の仕事という考えがこの時代、世界にもある。とはいえ、そもそも公爵令嬢なので自分で料理する必要はないのだが、そこをメイドに無理をいって作らせてもらった。主婦の時も料理は結構していたので、わざと不味くつくることなど朝飯前だ。ただ、さすが殿下という雲上人だけあって、顔を青くしながらもあのまっずい料理を食べきっていたが。そこは何だか後日申し訳なく思って、クッキーを焼いてあげた。あれはまぁ、普通に食べれたことだろう。
他にも自分で洗濯物をしたり、高いドレスはいらないと言って、安物に変えたりした。豪華な部屋から高い壺や絵画なんかは一掃して、公爵令嬢としては非常にみすぼらしい感じに変えてみた。殿下が屋敷に来るたびに不思議そうな表情をしていたのを覚えている。これもきっと殿下の不興を大いに買ったに違いあるまい。
さて、そんなこんな。
あれやこれやで。
殿下の不興を大いに買いまくってきた私なのだが、やはり家同士の取り決めなのだろう。なかなか殿下は婚約破棄を言い出してはくれなかった。
それどころか、割と律儀な性格なのだろう。こんな所帯じみた中身は30歳の女の元に結構な頻度……。週に5回くらいは通ってくるようになった。ただ、それが恋愛感情でないことは明らかだった。殿下は最初に、これは家同士の決めた結婚で愛など全くない、と言っていたのだから。私も完全に同意していたので、一生懸命婚約破棄されるように頑張ってきたわけだ。殿下もそれがうすうす分かっているのかどうなのか、私には徐々に柔軟な態度を見せてくれるようになった。
最初の頃こそ、まったく笑わず、殿下としての威厳を保っていたのだが、私が嫌がらせをしていくうちに、私には微笑みを見せたり、時には少し怒ったそぶりをしたりしてきたのだ。これは完全に殿下としての対応ではなく、どうせ婚約破棄をするのだから、雑に扱っても良い、というくだけた態度になっていったのだろう。
だが、なかなか婚約破棄の話はしてくれなかった。と、同時に、私はなんとか婚約破棄されるまでの時間を稼ぐように、今のお父様にかけあうとともに、殿下にもまだ結婚はしたくない、ということを再三にわたり申し上げて来た。おかげで、なんとか20歳を超えるまで粘り通すことが出来たのである。
この世界では20歳を超えて結婚できなければ、行き遅れなどと言われる。殿下も恐らく私のような行き遅れの噂が立つ公爵令嬢は嫌だろう。社交界でも肩身が狭いに違いない。
と、そんな風に着々と周辺を固めていたとき、ついにこの時が来たのだ。
婚約破棄!
私は思わず喝采を叫ぶのを押さえながら、微笑みつつ、
「どうかお幸せに」
と心からの賛辞を送ったのでした。
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