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異世界喫茶「ゆずみち」~勇者と魔王が異世界転生を愚痴っています~  作者: 美堂 蓮


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order5. ミックスジュースとオーラ

店の中はがらんとしている。カウンターに一人、女性がアメリカンコーヒーを飲んでいた。

「いつもこの時間帯は誰もいないねぇ……それがいいのだけど」とつぶやく。

そこに他のテーブルを拭いていたマスターが近づいて話す。

「まぁ、夜も遅いですからね。魔王さん閉店間際に来ること多いですから」

「いつもごめんね。周りの目もあって、この時間が一番ベストなの」

「大丈夫ですよ。ゆっくりしてくださいね」


マスターのやさしい言葉ににこっとしながらも、申し訳なさそうに魔王は話す。

「あと、ちょっと前もごめんなさいね。全く記憶ないんだけど、アリスに後で教えてもらって……」

「いえいえ、僕を頼ってくれて嬉しかったですよ」

マスターは苦笑いをしながら答える。

「あの後、あいつに会ったからボコボコにしてやったわ。もうすっきり!」

確かにボロボロだったなぁ……とマスターは魔王に聞こえない声でつぶやいた。


すると、カウンターの奥の扉から学生服をきた女性が出てきた。

「マスター、フルーツとかの搬入終わりました~。他に何か手伝うことありますか~」

「柚乃ちゃんお疲れ。空いているカウンターだけ拭いておいて」

「りょうかいです~」


柚乃は布巾を手に取りカウンターを拭こうとした。すると魔王がいるのに気付いた。

「あっ。魔王ちゃん! おひさ~」

「久々だね、柚乃ちゃん! 最近どうしていたの?」

「いやぁ、テスト期間でちょっとバイトお休みしてたから~」

「テストキカン……何かの呪文かしら。 せっかくだから横で何か飲まない?」

「飲みたいけど。マスターいいですか~?」

柚乃は奥にいるマスターに聞こえる声で尋ねた。

「お客さんもいないし、カウンターだけ拭いてくれたらバイト上がっていいよ」

「やった~。魔王ちゃん、ちょっと待っててね」


柚乃は布巾をもってカウンターの奥から拭き始める。それを見て魔王はマスターに、こそっと聞く。

「マスター。柚乃ちゃん、凄くいい子なのはわかるのだけど……一応、私って魔王なのに『ちゃん』付けって……」

「仕方ないよ。柚乃はどんな人でもあんな感じで接するから。ある意味、魔王さんのことも特別扱いしてないのかも」

「特別扱いされていないことを喜ぶべきなのか……魔王の威厳が無いと悲しむべきなのか……」

魔王が複雑な顔で悩んでいると、柚乃はカウンターを拭き終えて二人の元に来た。


「マスター! カウンターの拭き取り終わりました~」

「ありがとう。じゃあいつものでいい?」

「はい! お願いします~」

柚乃はニコニコして魔王の横に座る。

「いつもの? 柚乃ちゃんは何を飲むの?」

「ふふふ~。秘密です」

柚乃は口元に人差し指を立ててにこっとした。

その姿を見て、魔王は愚痴る。

「はぁ。他のパラユニもみんな柚乃ちゃんみたいな子だったらよかったのに……」

「そんなこと言ってくれるんですか~。照れちゃうなぁ」

「ホントよ。魔物の軍にいるパラユニは全く話を聞いてくれないし、人間の方のパラユニは……思い出したくもない」


柚乃は少し不思議そうに聞く。

「魔王ちゃんは魔物とか人間を見るとパラユニってすぐわかるの~? 私の学生服みたいに異世界の格好をしていたらわかるけど、転生してる人って見た目もこっちの姿でしょ?」

「私もはじめはわからなかったわ。魔物の軍にいるパラユニの話をするけど、ホント急に強くなって、知識も豊富で的確な指示を出す奴がちらほら出始めたの」

遠い目をしながら、魔王は続けて話す。


「で、そいつらから出てくるオーラみたいなもの見分ける魔法を編みだしたの。だから私は誰がパラユニか見える。ただ、この世界でも見分けれる奴はごく一部しかいないと思う。」

「ちなみに私もオーラ出てる~?」

「もちろんよ。この世界にいる奴らよりくっきりと」

柚乃はパァっと明るい表情になって聞く。

「どんな感じ~?色は?大きさは?炎みたいな感じ??」

「うーん、炎というよりかは渦みたいな感じ?色は緑色かな。」

「うわ~見てみたいなぁ」


柚乃がわくわくしているのを、魔王は愛おしい目で見る。するとマスターが奥から飲み物をもって来た。

「柚乃ちゃん。はい、ミックスジュース」

マスターはそういうと、柚乃の前にミックスジュースを置いた。

全体的に黄色がメインだが、少しだけ赤みがかっている。サラサラというよりかは若干ドロッとしている。

「マスター、ありがと~」

受け取った柚乃はストローをくわえて飲み始める。そして飲んだ後に

「う~ま~い~」と一言。


その姿を見て、魔王が少し不思議な顔をした。

「これは、どんな飲み物なの……イメージできないのだけど。」

「これはね、牛乳とバナナメインで他のフルーツを混ぜた飲み物。マスターが昔、旅行に行った際に飲んで、あまりのおいしさに自分の店でも出したいって頑張って作った一品だよ~」

「ぎゅうにゅう?ばなな?……味のイメージ付かないわ。というかドロッとしているのが……」

「飲んでみる? おいしいよ~!」

柚乃はコップを魔王に差し出す。魔王は少し飲むのをためらったものの、えいっと一気にストローで飲んだ。

「……!!! おいしい!!甘みが強くて、でも乳の味もしっかりしてる。これはこれでいいわね」

「でしょ~!」

柚乃は満足したのか、ニコニコしながら再びストローで飲み始める。

その姿を見ながら、魔王は小さな声でつぶやく。

「やっぱり、柚乃ちゃんに出会えて……本当に良かったわ」

そしてにこっとしながら、ストローでおいしそうに飲んでいる柚乃を見つめていた。


ここは魔王でもちゃん付けして許される喫茶「ゆずみち」

さて、次はどなたが来店するのでしょうか。




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