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異世界喫茶「ゆずみち」~勇者と魔王が異世界転生を愚痴っています~  作者: 美堂 蓮


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order37.フィナンシェと会議

夕方に色々な愚痴を聞いた日。勇者たちはもちろん帰ってもういない。

そして今は夜。それもほとんどの人が寝始めるような時間帯である。

それにもかかわらず喫茶「ゆずみち」からは、まだ光が漏れていた。


「マスター様、無理を言って申し訳ございません……」

「いや、気にしなくていいよ。アリスさんのお願いなら店ぐらい開けるさ」


カウンター席には珍しく魔王もおらずアリス一人しか座っていない。

ただアリスは目にくまができていて、とても疲れているのが良く分かる。

そのアリスにマスターは少し心配そうに、いつもの物を渡す。


「はい、オレンジジュース。今日は僕からのおごりで」

「いえそんな。この時間にお店を開けていただいているだけで、本当にうれしいですし……」


アリスはしゅんとする。それを見たマスターはニコッとしてカウンター奥から箱に入ったものを取り出す。


「じゃあ、これもプレゼントしよう。おひとつどうぞ」


箱の中には個包装されたものがいくつか並んで置かれていた。

アリスは少し申し訳なさそうにしながらその中の一つを手に取る。

透明な袋の中には、全体がきつね色で手のひらサイズの食べ物らしきものが入っていた。

マスターも同じく個包装の物を一つ取って、箱を片づけた。


そしてマスターはアリスに教えるかのように、透明な袋を破いて中身を口に入れた。

その様子を見ていたアリスも同じように袋を破き中身をかじるように食べる。

そして目をゆっくり閉じて味を楽しんでいるようだ。

そして飲み込んだ後、急に目を開きマスターに話しかける。


「初めての味ですが、バターの香りがとっても良くておいしい!!マスター様、このお菓子、すっごく甘くておいしいです!!」


目の前でとっても疲れていた少女が急ににこやかになって、マスターは少しほっとした様子に見える。


「それは良かった。これはフィナンシェっていうものなんだけど、貰い物なのでもちろんお店で出さないんだ。ただ今は店も閉めてるしお友達ってことで、みんなには言わないでね。さすがに僕は作れないし」


そう言いながら、マスターは人差し指を上に立てて、口に当てる。

アリスも同じように人差し指を上に立てて、口に当てた。

そして二人は見合わせて少しおかしかったのか、笑った。


アリスは残っていたフィナンシェを名残惜しそうに食べる。

あまりにも悲しそうに最後の一口を食べたので、マスターは箱からスッと追加で一つ取り出してアリスに渡す。


「いえ、そんな……」


そう言いつつ、アリスの目は新しいフィナンシェにくぎ付けになっていた。

その様子を見て、マスターは少し笑いつつもアリスの前にフィナンシェを置いた。

アリスは恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、消えゆくような声でマスターにお礼を言った


「ありがとうございます……」


そう言って包装を破いて二個目を食べ始める。

その様子を見ながら、マスターはずっと気になってたことをアリスに尋ねる


「で、アリスさんはどうしてそんなに疲れていたの?」


アリスはその言葉を聞いた瞬間、口に持っていこうとしていたフィナンシェをピタッと止め、入っていた包装の上に置いた。そしてハァとため息をついて話し始める。


「それがですね……今年の魔界の選挙の準備をずっとしていたのですが、今年は荒れそうなんです……」

「荒れる・・・?なんか前に他の人から話を聞いた時は、ほぼほぼ今の魔王さんで決定的な感じで聞いてたけど」


アリスはオレンジジュースを一口飲んで返事をする。


「私もそう思っておりました。ただ、四天王のダズ様というオーガ族の方が四天王会議にて『人間を今こそ滅ぼすべきだ!』と声をあげたのです」

「またなんで……」

「そもそもダズは人間嫌いというのはあるのですが……少し前に人間が魔界に攻めようとした話は覚えていますか?」


マスターは少し考えたものの、思い出して確認を取る。


「あの、パラユニが攻めてきた戦争でしょ?」

「そうです。あれを引っ張り出してきて『人間に攻められたんだ!』と騒ぎ立てているのです。もちろん、四天王としては吸血鬼のアヤメ様と魔導士のフェニル様は反対だったのですが……」


そこでアリスは話を止める。マスターはこの時点で出てきていない名前を出して話す。


「四天王の中に黒騎士もいたよね?もちろん反対でしょ?」


その言葉にアリスは首を横に振る。


「いえ……厳密にいえば保留にしたのです。黒騎士は基本的にこのようなことは全て放棄する立ち位置ですので。なぁ、四天王のうち二人が反対したということで魔王様は進行は不可という判断をされたのです」

「まぁ、普通だわな」


マスターはアリスの話に首を縦に振る。でも、アリスの顔は渋くなりつつ話を進める。


「その決定にダズ様はぶち切れて、会議が大荒れに……ダズ様とアヤメ様、フェニル様が喧嘩をし始めて、魔王様も止めに入って……そのあとはさんざんでした。結局、その後の掃除含めて私がしたのですが、最悪な一日でした……」


そういいつつ、オレンジジュースを一口飲んで笑顔になっている。

マスターはそんなアリスの労をねぎらう。


「その会議の片づけ含め相当大変だったんだね……お疲れさま。まぁ、店も閉まってるし時間許す限りゆっくりしていきなよ」

「はい。お言葉に甘えて……すみません、オレンジジュースもう一杯頂いてもよろしいでしょうか?」

「あいよ。ちょいとお待ちを」


そういうと、マスターはオレンジジュースを作りにカウンター奥まで行った。

愚痴を聞いてもらってすっきりしたのか、アリスは来た時とはうってかわってすごくにこやかな顔をしながら、置いてたフィナンシェを食べ始めた。


ここは、魔王の側近も愚痴に来る喫茶「ゆずみち」

さて、次はどのような頂きものがでるのでしょうか。




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