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異世界喫茶「ゆずみち」~勇者と魔王が異世界転生を愚痴っています~  作者: 美堂 蓮


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order30. チョコレートと告白

外は季節外れの雨が降り続いていた。気温はここ数日の雨でかなり冷え込んでいる。そして喫茶ゆずみちもかなり珍しく、昼間であるにも関わらず扉には「CLOSE」の看板がかけられていていた。


「マスターさん、大切な話って何ですか?」

イロナは四人席のテーブルの方に座る。イロナが座った場所を確認してから柚乃が対角の場所に座った。


「あぁ、ちょっと待ってくれ。ホットココアとミックスジュースを入れるから」

マスターはそういいながら、準備しつつも少し手が震えていた。そして、自分の分のブレンドコーヒーも準備が完了したのか、深呼吸してからみんなの飲み物を持ってイロナの方に向かう。


「はい。イロナちゃんはココア、柚乃はミックスジュースね」

そう言いながら、ココアとミックスジュースを渡そうとする。ただ、手の震えは止まらず、ココアをこぼしそうになる。それをイロナがココアのカップをしっかりと受け止めつつ、マスターに声をかける。

「マスターさん、大丈夫ですか? いつもと様子が違うようですが……体調でも悪いのであれば別に後日でもいいですよ」

「いや、気にしなくていいよ。ありがとう」

イロナは心配そうにマスターの方を見つつも、マスターはニコッとしてからイロナの対面に座る。


そして、少しの静寂が生まれる。マスターは意を決したのか、深呼吸してからイロナに話しかける。

「イロナちゃん。これから大切な話をしないといけない。先に話しておくけど、僕の話の途中で遮って話してもらっても構わないし、もし辛くなったら勝手に席を立ってもらっても構わない」

「……マスターさん?」

イロナはマスターの真剣な眼差しや言葉と、その話している内容に少しおびえているようだ。それでもマスターはそのまま話しを続ける。


「まどろっこしいのは嫌いだから、ストレートに話をするけど……」

マスターは再び深呼吸をする。そしてゆっくりと丁寧に言葉を発した。



「イロナちゃんのご両親を勝手ながら探させてもらった」

「……」

イロナはマスターから出てきた言葉の意味を瞬時には理解できなかったようだ。ただ、ゆっくりと実感が湧きあがっているのがみて分かる。マスターの方を見るのをやめ、うつむいてしまう。


「僕のわがままで、色々な人たちにお願いして、勝手に探した……。そして、見つかった」

イロナはうつむいたままだ。顔が見えないので、どのような表情をしているのかを推し量ることができない。ただ、ゆっくりとイロナはマスターに消えゆくような小さな声で質問をした。


「……マスターさん。まずは、両親を探していただいてありがとうございました。ただ、どうして今まで隠していたのですか?」

「イロナちゃんのご両親が生きているか、その保証がなかったからだ」

「……もし、生きていなかったら私は知らずに過ごしてたってことですか?」

「そうだ」

マスターは自身の責任のためかはっきりと答える。イロナは声のトーンを変えずに質問を続ける。


「私が……私が戦争で両親と別れ、その後に奴隷商につかまって働き続けてきたことを知ったうえで、ですか?」

「そうだ」


イロナはバッと顔をあげて、涙を流しながらマスターを問い詰めるように質問をした。

「私が……私がこの「ゆずみち」で……マスターさんや柚乃さんを新しい家族だと思っていた気持ちを知っている上で!?」

「……そうだ」


マスターはうろたえず、イロナの方を見ながら話す。マスターとイロナは目を合わせにらみ合う。そしてマスターは続けて話す。

「僕もイロナちゃんのことは可愛い家族だと今でも思っている。ただ、家族だと思っているからこそ、家族の問題は解決しないといけない」

「どうして……どうして勝手に解決しようとするのですか!?私の気持ちは?」

「その点だけは……すまない」

「謝ってほしいなんて一言も言ってない!どうして……私に一言でも話してくれなかったの……?私はマスターの家族じゃないんですか!?話してくれなかったことがとても悲しいんです!」


イロナは涙を流しながらも話し続けた。話しを終えると、再びうつむいた。マスターはイロナの話に対して返事ができずに黙っている。そこに横で黙って聞いていた柚乃がゆっくりとイロナに話しかける。


「イロナちゃん……イロナちゃんの気持ちは全く何も間違ってないよ。私もつい最近教えて貰ったんだけど、イロナちゃんと同じ気持ちだった。家族なのになんで教えてくれないのって」

柚乃はイロナの様子を見ながら話し続ける。


「私は、マスターの気持ちもわかって何ていう気はない。だって、イロナちゃんの気持ちは間違ってないもの。ただ、これだけは伝えたい。マスターも私も……イロナちゃんの家族だっていうこと。たとえ血がつながってなくても」


そう言うと、柚乃は席を立つ。ポケットに手を突っ込み黙ってチョコレートを一粒だけイロナの前に置く。そしてそのまま席を離れた。


イロナはそのチョコレートを泣きながら眺める。そしてそのチョコレートをつかみ、ポケットに入れて無言で席を立った。そして柚乃と同様席を離れた。


マスターは一人席に座ったまま、何を考えているのかわからない。ただ、宙を見て少しの間その場から動かなかった。


ここは、喧嘩も起こってしまう喫茶「ゆずみち」

さて、次はどのような告白があるのでしょうか。





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